量子テレポーテーションで人間は転送できるか?/著者:二間瀬敏史

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書籍情報

タイトル

量子テレポーテーションで人間は転送できるか?

やさしく読める量子力学

発刊 2025年4月6日

ISBN 978-4-86581-459-0

総ページ数 263p

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出版社リンク さくら舎

著者

二間瀬敏史

東北大学名誉教授。一般相対性理論、宇宙論が専門。

出版

さくら舎

もくじ

  • はじめに
    • 量子力学がざっくりわかるイントロダクション
  • 第1章 アブラカタブラ、不思議な量子
    • ミクロの世界の住人はみんな「量子」 白黒はっきりしない謎の量子オセロ
    • 確率が共存する「状態の重ね合わせ」?
    • 量子もつれのオセロが示す矛盾―――EPRパラドックス
    • 同時の相対性 同時の絶対性
    • 情報は光速を超えて伝わっているか?
    • 日常生活とかけ離れた量子の世界
    • 量子テレポーテーションで瞬間移動?
    • 何が転送されたのか、転送されたものは本物か?
    • 量子テレポーテーション実用化まであと少し
    • 人間をテレポーテーションするには?
  • 第2章 開かれたミクロの扉
    • 溶鉱炉の温度を正確に知りたい
    • 19世紀の物理学者の悩み
    • 量子を予言したプランク_「光のエネルギーはとびとび」
    • 世界を作っている3つの数字プランク定数、光の速度、ニュートンの重力定数
    • 「光は波」のマクスウェル理論からの転換
    • 「光は粒子」と明らかにしたアインシュタインの光量子仮説
    • 「光は波であり粒子でもある」が実証
    • 「電子も粒子であり波である」_ド・ブロイ仮説
    • 電子が原子核のまわりにいられる理由_ボーアの原子模型と量子条件
    • 波として一周する電子をイメージすると…
    • 2つの方程式、どちらが正しい?_ハイゼンベルクとシュレーディンガー 観測した瞬間に量子の「波」が収縮?_シュレーディンガーの考え
    • 電子がそこで見つかる確率が波動関数_ボルンの考え
    • 実体ではない波動関数が瞬間収縮しても問題なし
    • 理屈がわからずとも結果が出るコペンハーゲン解釈
  • 第3章 量子力学のミステリー
    • よくわかる二重スリット実験
    • 光の強め合い、弱め合いを示す干渉縞
    • 1個ずつの電子でも干渉縞が出る
    • アインシュタインとボーアの論争_干渉縞と観測は両立するか?
    • ミクロとマクロの境目はどこ?
    • EPRパラドックスも注目されず…
    • 思考実験「シュレーディンガーの猫」_生と死の重ね合わせ
    • 重ね合わせが壊れる「デコヒーレンス」は未解明
  • 第4章 量子力学 Q.E.D.(証明終了)
    • 「隠れた変数」が見つかっていないからでは?
    • 足し算と引き算でわかる「ベルの不等式」_CHSH不等式
    • 「ベルの不等式の破れ」を実証したアスペの実験
    • 気づかない暗黙の了解が含まれていた
  • 第5章 核融合スキャンダル&超伝導フィーバー
    • 量子がもたらす光と闇
    • 量子力学でわかった核分裂と核融合
    • 太陽のエネルギーは何が燃えているのか?
    • 太陽の核融合を可能にするトンネル効果
    • 夢のエネルギー「核融合炉」
    • 国際熱核融合実験炉「ITER」計画
    • 20世紀最大の科学スキャンダル「低温核融合」
    • 超電導で送電ロスをなくす
    • 金属はなぜ低温で超伝導状態になるのか
    • クーパー対と超伝導を量子力学で読み解く
    • 高温超伝導フィーバーに世界中が躍る
    • ノーベル賞最有力若手研究者シェーンの捏造
  • 第6章 量子時代がやってくる
    • 量子コンピュータと暗号
    • コンピュータの草創期
    • スパコンでも苦手な「巡回セールスマン問題」と素因数分解
    • 量子三兄弟 _ ファインマン、ドイッチェ、エヴェレット
    • マクロの観測が重ね合わせを破壊する_コペンハーゲン解釈
    • 「私がいる宇宙」が無数に分岐していく_エヴェレットの多世界解釈
    • 宇宙の始まりではコペンハーゲン解釈が成立しない
    • 量子コンピュータの基礎「2進法」とは
    • ムーアの法則の終焉_性能アップの限界
    • 多世界宇宙の量子コンピュータが協力して計算している?
    • 量子ゲートで正解の候補をざっくり絞る
    • 素因数分解を利用したRSA暗号の危機
    • 量子暗号の時代がくる
    • 「組み合わせ最適化問題」向きの量子アニーリング方式
    • 量子コンピュータの現状 量子ビットに何を使うか
    • 量子コンピュータの現状 2実用化にはエラー訂正の技術発展が必要
  • 第7章 ブラックホールを量子力学で解き明かす
    • 相対性理論で考えるブラックホール_空間自体が落下する
    • 太陽の100億倍の超大質量ブラックホールもいる
    • 似ている2つの物理法則_ブラックホールの表面積増大の法則とエントロピー増大の法則
    • エントロピーの正体は「マクロ状態に対応するミクロ状態の数」
    • ブラックホールのエントロピ=知りえないミクロ状態の情報量
    • 量子を空間に広がった場の振動とみる「場の量子論」
    • 真空の揺らぎ零点振動=零点振動
    • 真空で絶え間なく起こる対生成・対消滅
    • 真空では量子もつれができたり、消えたりしている
    • 光子の対生成がブラックホールを蒸発させる_ホーキング放射
    • ブラックホールの情報パラドックス情報が消えてしまう
    • 超弦理論量子もつれを完全観測すれば情報は残っている_量子重力理論の有力候補
    • 超弦理論でブラックホールのエントロピーを考える
    • 「重力は重力以外の力と同じ」の衝撃_マルダセナ予想
    • ブラックホール内部がワームホールの入り口に!_アイランド仮説
  • 第8章 量子もつれが時空を生み出す
    • 缶入りスープでわかるマルダセナ予想
    • 空間と量子もつれには関係がある_笠・高柳公式
    • 量子もつれが空間をつくる!?_空間の創発
    • 力は「場」によってもたらされている_一般相対性理論おさらい1
    • 時空を曲げるのは物質_一般相対性理論おさらい2
    • アインシュタイン・ローゼンの橋=ワームホール
    • ER=EPRの意味するもの
    • 重力は量子もつれから作られる?
    • 量子と時空のつながりを量子コンピュータで解明

書籍紹介

 この本の最大の魅力は、量子テレポーテーションというSFのようなテーマを、専門知識がなくても楽しめるように解説している点です。量子テレポーテーションは、量子もつれや非局所性といった量子力学の現象を利用して情報を瞬時に転送する技術ですが、果たして人間そのものを転送することは可能なのでしょうか。著者はこの問いを軸に、量子とは何か、量子コンピュータの仕組み、さらには量子もつれが時空に与える影響まで、平易な言葉で丁寧に紐解いていきます。たとえば、量子テレポーテーションが実現した実験の話や、それが人間の転送に応用される可能性と課題についても触れ、科学的な好奇心を刺激します。

 専門用語をできるだけ避け、日常的な例えを用いて説明することで、量子力学が遠い世界の話ではなく、私たちの未来とつながっていることを感じさせてくれます。たとえば、量子コンピュータがなぜ高速なのか、量子もつれがどのように情報を結びつけるのかといった話題は、技術の進化が社会に与える影響を想像させます。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

量子テレポーテーション

 量子とは電光掲示板の明かりのようなものであり、電光掲示板が量子のいる空間、電球は空間に埋め込まれた量子の性質のようなものです。この性質を「場」といいます。空間に何もないように見えても、さまざまな量子の場が備わっています。

 量子テレポーテーションとは電光掲示板のある場所の明かりが、別の離れた場所に移動したようなものです。この量子テレポーテーションの仕組みは1993年に発見され、100個の光子の量子状態を送って、1個の情報を正しく転送されるという効率の悪いものでした。

 この光子の波動の性質を利用した実験が繰り返され、今では転送効率60%以上を達成しています。光を使った量子コンピューターの実現へと期待が高まりました。

 人間をテレポーテーションする場合、人間という大きな複雑な物体のさまざまな量子に量子のもつれを用意する必要があります。光子などミクロの粒子を量子もつれにさせる技術はすでに完成していますが、人間のようなマクロな物体の場合、どうやっておこなえばよいのか、よくわかりません。

国際熱核融合実験炉「ITER」計画

 核融合炉のいちばんの問題は、高温状態の炉内に燃料となる原子核を長時間安定させるために閉じ込めることです。

 高温での物質は原子核と電子がバラバラになったプラズマ状態となります。この状態を維持することで核融合を起こすことができるのです。そのためには温度と密度をある程度あげることが重要となっています。

 超高温のプラズマを閉じ込めるためには、荷電粒子が磁力線に巻き付くように運動するという性質を利用します。日本も参加している国際熱核融合実験炉(ITER)もこの方式を使っています。

 ITER計画は2025年の運転開始を目指し、日本、EU、アメリカ、ロシア、韓国、中国、インドにより進められています。数百秒の間、核融合反応を続けて起こすためにつぎ込んだエネルギーにたいて、10倍のエネルギーを出力することを目標にしています。この核実験が実施されるのが2035年と想定されており、この太陽の構造と化したエネルギーを地上にともすには、まだまだ長い道のりが待っていそうです。

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