朽ちるマンション 老いる住民

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 マンションに入居した段階ですでにルールが作られていることが多いのです。

 購入時から管理会社が決まっていて、日常の管理業務を担っていくれています。持ち回りで理事の役員が回ってくることはあっても、専門知識も必要な管理や修繕について、積極的に関わっているという人は少数派でしょう。

 最近のマンショントラブルは、管理会社側から契約更新を拒否され、住民が高齢化して理事のなり手がいないなど、マンションの運営そのものが立ちゆかない事態があちこちで起き始めています。管理が行き届かず、「スラム化」するマンションすらあるのです。

 マンションを巡る問題は、戦後の住宅政策問題と重なります。マンションという1つの困りごとは、実は政治や行政の問題とつながっているのです。その視点をもつことで、解決に向かた道筋も考え方も変わってくると思います。

書籍情報

タイトル

朽ちるマンション 老いる住民

第1刷 2023年1月30日

発行者 三宮博信

発行 朝日新聞出版

カバーデザイン アンスガー・フォルマ― 田嶋佳子

ISBN 978-4-02-295204-2

総ページ数 213p

著者

朝日新聞取材班

出版

朝日新書 894

廃墟マンション問題

UnsplashDaniel Lincolnが撮影した写真

 10年ほど、マンション管理組合の会計事務代行業務を担ってきた「横浜サンユー」の利根宏社長は、管理不全になった理由として、住民の管理意識の低さをあげています。

 9戸の内5戸の所有者は住居しておらず、総会などにもほぼ参加していません。残りの所有者も、高齢などの理由もあり、積極的に管理に関わることが難しいのです。

 スラム化するマンションは、10~20戸ほどの小規模マンションで特に顕著だといいます。

 利根社長は、マンション管理士などの専門家を無償で派遣し、組合が積極的に管理に関わり最後まで責任を持てるようにするための法制度など、未来を見据えた対策が必要だと考えているようです。

 2020年6月、改正マンション管理適正化法が成立しました。これまでマンションは私有財産であることから管理組合の自主的な管理に委ねられてきましたが、組合が関与しなくても行政が積極的に関与できるようになっています。

介護の問題

Image by Gerd Altmann from Pixabay

 妻の症状は一気に悪化していくのです。

 連日のように深夜に起き出し、玄関のドアをどんどんたたき、「もう帰る」「うそつき」などと大声を出す。興奮して足を踏みならし、イスを放り投げることもありました。静かにさせなければと焦り、思わず手が出てしまったこともあります。

 間もなく、騒音の苦情があるという注意書きが全戸に配布されました。名指しこそされていないが、妻のことであるのは明らかです。

 できることは、深夜に大声を出してしまう妻を車に乗せ、一晩中ドライブすることぐらいです。睡眠も満足にとれない状態が続きました。

 2020年秋、妻はグループホームに入居しました。苦渋の末の決断です。

 セキュリティーとプライバシーが重視されるオートロック式マンション。認知機能が低下した時には出入りも難しくなります。妻はオートロックの扉を解除できなかったのです。ここにも介助の壁がありました。

 慣れ親しんだ家から引っ越したくない、いつか妻を引き取りたいという気持ちがあったのかもしれません。あんなに一緒にいるのが辛かったのに、妻が可愛て可愛て仕方ないのです。

毎日何かがあるマンション

Image by bridgesward from Pixabay

 管理組合の理事になり、目指したのは「毎日何かがあるマンション」です。

 周辺に飲食店が少なかったことに着目し、バーラウンジで昼食も提供してもらうようにすると、利用者は5倍になりました。住民が教えるヨガ教室を開くと満員なったのです。

 交友関係も広がり、共用施設の利用時に知り合った住民とゴルフや外食に出かけることもあります。

 ここで管理組合の役員を6年務めた経験を活かし、2021年に(株)新都市生活研究所を立ち上げました。マンション組合と、イベントを提供する事業者との仲買などを通じ、コミュニティーづくりを支援しています。

担い手不足

Image by Coombesy from Pixabay

 62歳女性が暮らす築40年超のマンションでは、独居や老々介護などで、理事を引き受けるのは難しいという高齢の住民がでてきました。高齢などを理由に理事を辞退する場合は、年約5万円を支払う事を総会で決めています。

 管理業務を管理会社には委託せず、自分たちで行う当番制を続けてきたのです。約6年に1度のペースで回ってきます。

 理事長には年間1万5千円の理事報酬が出るが、住民、清掃や点検の業者、保険会社などとのやり取りで電話代は月5千円ほど跳ね上がります。ボランティアと割り切っていますが、理事報酬の値上げがないと負担が大きいのです。

 辞退金を決めたときは、高齢世帯からの反発も大きいものでした。修繕費や建て替えなど、意見の集約や困難と思われる様々な課題が、これからも待っています。

あとがき

 全国のマンションが年を重ねるなかで静かに積み上がってきた課題、住民たちの日常の困りごとには、あまり目が向けられてきませんでした。

 長く日が当たらなかったテーマに、別々の部署で取材班が立ち上がったことは、もはや放置できない重要な社会問題だと認識する記者が増えたことを示すものでしょう。

 取り上げた課題の多くは一朝一夕で解決できるようなものではありません。それでも、さまざまな模索を続ける人たちがいます。

 ときには明かしづらいことも含めてお話しいただいた全国各地のみなさまには、感謝するしかありません。

 本書が、現状の厳しさを伝えるだけでなく、みなさまの取り組みを支援し、同様の悩みを抱える人たりに少しでも参考になることがあればと、取材班一同、そう願っています。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 隣人トラブルで、介護からくる騒音というのも、昔は「ご迷惑をおかけします」とお菓子でも持って謝罪し、全戸からクレームが集中するということは少なかったと思います。

 今は隣人のコミュニケーションも淡白なものなのでしょうか。

 エレベーターの無い団地で、おばあちゃんを背負いながら家へ連れ帰るという介護は、ヤバかったなぁと記憶が蘇りながら、マンションでの介護についての章を読ませていただきました。

 集合住宅の問題は、全員が納得する形になりずらいと思います。閑静なところに、扉を閉める音などでスグにクレームを入れるサイコパスな住人は、マンションには何人か存在するでしょう。正義は人によって違うので、許容できない人がいるとまとまらないのです。

 そんな中で、人を呼び寄せるイベントがあるマンションという施策にも触れました。こうした試みもあると、今後のマンションの明るい部分にも触れられて助かりました。

 地域の問題としてみると、他人事ではありません。日本が抱える暮らしの問題について、本書で考えてみてはいかがでしょうか。

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