ファーブルと日本人/著者:養老孟司、奥本大三郎

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書籍情報

タイトル

ファーブルと日本人

発刊 2024年7月9日

ISBN 978-4-910364-47-6

総ページ数 195p

書評サイト nippon.comダ・ヴィンチweb

著者

養老孟司

東京大学名誉教授。専攻は解剖学。

著者

奥本大三郎

フランス文学者、作家。

出版

かや書房

もくじ

  • ファーブルってどんな人?
  • ファーブルの生家
  • ファーブル昆虫記に登場する虫たち
  • はじめに
  • 第1章 『ファーブル昆虫記』と現代
    • 虫がいなくなると、世界はどうなってしまうのか
    • ネオニコチノイド系農薬が生き物を減らす
    • 若い人は周りの評価を気にし過ぎる
    • 虫めづる日本の絵画
    • 生態系の保全には枯葉も大切
    • 昆虫採集は化学への第一歩か?
    • 「仮名文字運動」と「カナモジカイ」
  • 第2章 人間には自然が必要だ
    • 人間は湖や海岸や森の自然を求めている
    • 「ノースマホデー」をつくればいい
    • 「京浜昆虫同好会」と「京浜安保共闘」
    • 里山をつくり、トンボ捕りをやろう
    • 虫が減ったら、鳥も減る
  • 第3章 ファーブルと日本人
    • 「手つかずの自然」って何?
    • 日常にある自然が大切
    • 日本にとって、西洋の科学は借り物
    • ファーブルが階級の壁を乗り越えた理由
    • わからないから、面白い
    • 「いてくれた。君を知っているよ」という喜び
  • 第4章 ファーブルという生き方
    • 西洋の価値観に毒されている
    • 現代人は意識外の世界を認めない
    • 勉強はわからないからやるもの
    • ファーブルが長寿だった理由
  • 第5章 日本人は最終的に自然に回帰する
    • 乾燥した南仏、湿気の多い日本
    • 弥生人は食により縄文人を差別していた
    • 日本のスギは「ウエスギ」(植え過ぎ)?
    • 「自然に還る」ための場所がない
    • いまこそ参勤交代が必要
  • 第6章 予定調和でない世界に立ち向かう
    • 歳を取ったら、適当に生きればいい
    • 人間ではなく、自然を相手に生きていく
    • GDPで人間の幸せは測れない
    • 役に立たないことをしよう!
  • おわりに ファーブルと養老先生と私

書籍紹介

ファーブルと日本人:自然と人間の交差点

 最近、かや書房から「ファーブルと日本人」という興味深い書籍が発売されました。この書籍は、解剖学者の養老孟司氏とフランス文学者の奥本大三郎氏による対話集で、フランスの自然史家ジャン・アンリ・ファーブルの生涯とその影響を日本社会と対比しながら論じています。

ファーブルの世界

 ファーブルは、その「昆虫記」で広く知られる生物学者であり、彼の詳細な観察と詩的な表現は、自然の謎を解き明かすだけでなく、人間が自然とどのように関わるべきかという哲学的な問いを投げかけています。この書籍では、そんなファーブルの思想が、現代の日本人の生活や思考にどのように投影されるかを探求しています。

日本人の視点から見たファーブル

 養老孟司氏と奥本大三郎氏は、ファーブルの視点から日本の環境問題、教育、AI、老後問題、経済まで幅広く議論します。特に日本人は、自然から遠ざかり、感覚を失いつつあるという問題提起は、我々がどのように自然と共存し、学び続けるべきかについて深く考えさせられます。

自然と人間のかかわり方

 この書籍が強調するのは、人間が自然から学び、自然と共存する重要性です。ファーブルは昆虫を通じて自然の原理を教えてくれますが、日本社会ではそれがどのように活かされているか、また失われているかという視点から、我々がどのような価値観を持ち、どのような社会を作り上げてきたのかを振り返ります。

写真とイラストによる視覚的豊かさ

 また、この書籍は写真やイラストも豊富に掲載しており、単に読むだけでなく、視覚的にファーブルの世界や日本の自然環境を理解することができます。これにより、読者は抽象的な議論だけでなく、具体的な景観や生物を通じてテーマを体感できます。

生き方を再考するきっかけに

 「ファーブルと日本人」は、単なる自然史や哲学の本ではなく、我々の生き方、考え方についての深い洞察を提供してくれます。養老孟司氏と奥本大三郎氏の対話から、日本の文化、社会、そして人間性について新たな視点を得ることができるでしょう。自然と人間の関係を再考するきっかけを与えてくれるこの書籍は、特に日本人のアイデンティティを探求する読者にとって必読の一冊と言えます。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

日常にある自然が大切

 人工知能で騒いでいるけれど、世界に80億個の脳があるものを莫大なお金をかけて作らなきゃいけないのでしょうか。世界中の無料の頭を使うための工夫をした方がいいと思っています。

 頭を使い出すと極端な方向に行き過ぎる人がいます。山に行ったり、森に行ったりして「一人キャンプ」が流行することがあります。

 家に虫がものすごくいた時代には、日常にある自然を気にしていなかったでしょう。ウジ虫、ハエ、蚊、シロアリ、ゲジゲジ。今は物理的に違う世界に住んでいるものを気にし過ぎています。どのマンションも虫を排除するでしょうし、ゴキブリが1匹出ただけで大騒ぎです。

勉強はわからないからやるもの

 僕は昔から世の中が苦手です。人と付き合うより虫と付き合っているほうが性に合っています。虫を調べると、わからないことを勉強することになります。勉強したつもりはないけれど、よくわからないことをわかるようにしようとします。どうせわからないけれど、頭の中を整理しようとします。

 アリストテレスが「君が間違っているんだ」と言えば、それが正しい情報になった時代もありました。ギリシャやラテンの学問の中には、そのくらいの間違いがあったはずです。外国から情報を得た解剖学や昆虫学も、始めは間違いだらけだったでしょう。

役に立たないことをしよう!

 高齢者も病気や医療に関して、医者から言われたことをあまり厳守する必要はないでしょう。食後に必ず錠剤を飲まなければならない人生は、楽しくありません。

 小学生から金融を教えるのも異常ですし、異なる文化の英語を小さい頃から教えるのも変です。子どもはもっと遊んだ方が良いと思います。

 ブレイクダンスが好きでやっている男の子がいました。その子は活発な性格で、森の中に入り、明かりをつけて虫を捕まえてきます。彼によると、最初は虫が見えないけれど、体の力が抜けると虫が見えるようになるのだそうです。いつか来る大地震があっても、上手に逃げられるのではないでしょうか。

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