能力はどのように遺伝すのか

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 起きる時間をきめて、その時間にすっきり起きることができたか、朝食には何をどのくらいの量、どれくらいの時間をかけて食べたか、歯磨きをどれだけ丁寧にしたか、クローゼットから何の服を選んだか、クローゼットの中は整頓されていたか、きちんと洗濯やアイロンがけをしているか…

 日常のありとあらゆる行動と判断、それにともなう感情の背後に、ことごとくあなたの能力が発揮されています。知識や技能を少しずつ学習した末に獲得されたものであり、それは環境が変わればまた変化し、とどまることがありません。

 本書では、最新の「行動遺伝学」と、その関連の知見をふまえて、これまでにない緻密な考察をしてゆきます。

書籍情報

タイトル

能力はどのように遺伝するのか

「生まれつき」と「努力」のあいだ

第1刷 2023年6月20日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

本文印刷 (株)新藤慶昌堂

カバー表紙印刷 信毎書籍印刷(株)

製本 (株)国宝社

カバー装幀 五十嵐徹(芦澤泰偉事務所)

カバー画像 八木ヨシユキ

本文デザイン 齋藤ひさの

本文図版 さくら工芸社

ISBN 978-4-06-532405-9

総ページ数 237p

著者

安藤寿康

慶應義塾大学文学部名誉教授。博士。専門は教育心理学、行動遺伝学、進化教育学。

出版

KODANSHA ブルーバックス

「顔」のつくり

Image by Karen Warfel from Pixabay

 遺伝情報全体のことを、遺伝学では「ゲノム」と呼びます。30億対の塩基の配列、その全体が、1つの有機体をつくりあげ、それが誕生から死までのあらゆる生命の営みにおいて、そのゲノムの個体性を示し続けるのです。

 人の営みを想像させる、わかりやすい例が「顔」です。顔立ちは万人すべて違います。とりわけ一卵性双生児は、お互いにこの世の誰よりもよく似ているという意味で、遺伝によって強く規定されていることがわかります。乳児から成人期にかけては、顔のつくりもずいぶんと変化し、100年も生きれば、きんさん、ぎんさんくらいの差は生まれるものです。

 「顔」の遺伝子などありません。顔立ちをつくる特定の遺伝子は存在しないのです。たくさんの遺伝子がつくりだすタンパク質の組み合わせにより、その人の顔をそうさせています。双子でも時々の表情が刻々と変化し、その変化の連鎖まで同じということはほぼありません。

 美人やイケメンにも魅力を欠いた表情をする瞬間はあるし、美しさやかっこよさからほど遠いと思しき平凡な顔立ちの人でも、魅力的な表情をする瞬間があります。

 人は文字通り、他人の「顔色」を意識しながら生きています。その意味で、顔は社会的です。

1つ1つの効果は小さい

Image by swiftsciencewriting from Pixabay

 血液型や血友病や髪の色、耳垢が乾燥か粘性かなどは単一の遺伝子によるもので、メジャージーンとよばれる主遺伝子です。認知能力やパーソナリティのような心理的形式はもとより、身長や体重、風邪などの罹患率といった複雑な形質は複数の遺伝子が関与する、ポリジーンと呼ばれる遺伝様式となっています。

 知能のような心理的形質の個人差に4000ヵ所近くもの塩基の違いがあるとすると、その1つ1つがどのような機能を持つのか、その相互の関係はどのようになっているのかを解明することは、個々の効果量の小ささを考えると、少なくとも現時点では不可能といってよい複雑さです。

 やはり、双生児による量的、統計的分析が有効です。

教育年数PGSと年収

作者: さるですが。

 教育年数PGSは、対象者の学歴を表すものです。PGSの段階が上がるにつれて、高校卒業率や留年率もきれいに増加、あるいは減少することも示されているのです。

 2018年の段階で、それまでに西欧圏の3ヵ国5ヵ所で独立に長期にわたって大規模な親子コホート調査が実施されています。学歴や職業水準、収入との関連が報告されているのです。

 PGSを説明する効果量を示してる棒グラフがあります。相関係数にして0.1~0.3程度と、わずかではありますが当家的には親の教育PGSが子どものPGSに有意に働いていることが証明されているのです。

 収入の差に反映されるかどうかも検討されています。効果量は相関係数で0.1を少し程度ではありますが、統計的には有意な影響があるようです。

自立教育は必要か

Image by sobima from Pixabay

 教育などの制度は、どのように機能することが正しいのでしょうか。公的とは必ずしも国家が提供するものとはかぎりません。

 知識に編重した旧教育感を改めて、自立した人間を育てることが新しい教育目標となっています。

 しかし、自立した人間を育てる教育は今までもできていたのではないでしょうか。日本のノーベル賞受賞者数はダントツ1位ですし、スポーツや芸術の分野でも、世界最高ランクに位置する業績を個人であげています。

 海外旅行をすれば、日本の都会の清潔さ、時刻表どうりにちゃんと来る鉄道・バスの正確さ、どんな田舎町にも必ず一軒はおいしいラーメン屋があり、世界に冠たるものと実感できるのです。

 それにもかかわらず、より良い教育が望まれて、現場の人々がそれに走るばかりに、知識の定着がおろそかになり、いままでできていたこともできなくなる人たちが相対的に増えているのが、いまの公の教育現場ではないでしょうか。

あとがき

 「学力は遺伝だ」などというと生徒が勉強をする気をなくします。かくして遺伝は、パンドラの箱にしまい込まれたままです。

 けれど、パンドラの箱を開けてみて、知って受けとめたうえで、なんとかする態度や方策を考えることの方が健全であると感じていただけないでしょうか。

 一人ひとりの遺伝を知らずして、一般的な「よい環境」を考えることなど、幻想です。

 本書で描いた内容から批判したり、新しい教育制度、新しい政治制度、新しい社会思想のあり方について、それぞれに多様に展開してくれると思います。それだけでも十分に新しいことであり、それこそが正しいことでもあり、そうした議論が起こるだけでも、本を出版した意義は十分にあると信じています。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 それなりに、遺伝も能力に相関係数にあると言えます。そんな内容でした。

 教師や警官など、若い人が足りない職業がいっぱいあります。わざわざ、職員の仕事を増やさなくても良いんじゃないかなと思うこともあります。子どもは勝手に育つ部分がありますし、子によって発達の早い遅いがあるものです。普通に考えても、生まれつきの能力は関係があるとこはわかります。

 それを受容して自分なりに努力するというのは、なんの知識もないとできないものです。受容する知識は主に読書から学べます。物語にしろ、主人公の心のうちの葛藤に学べるものがあるでしょう。発達が遅くたって自分を受容できる力を身につければ、前を向けます。読書なにげに最強だと思うのです。

 だから、著者の「今までも教育できているのではないか」というのには、納得してしまいました。

 これはこうだ。と決定的なことを言えないのが科学ですが、坦々と遺伝と能力の事について本書で知れるのではないでしょうか。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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