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目次
書籍情報
おカネの教室
僕らがおかしなクラブで学んだ秘密
発刊 2024年4月1日
ISBN 978-4-10-104971-7
総ページ数 318p
高井浩章
YouTube、noteで経済や教育論などの情報を発信しているコラムニスト
日本経済新聞社で編集委員、キャスターとして活躍。その後、独立。
新潮社
- 4月
- 1時間目 そろばん勘定クラブへようこそ
- 2時間目 お金を手に入れる6つの方法
- 3時間目 役に立つ仕事 立たない仕事
- 5月
- 4時間目 リーマンショックはなぜ起きた
- 放課後 図書室で会いましょう
- 5時間目 もうけは銀行家、損は国民に
- 放課後 先生とお父さんは同級生?
- 6時間目 いる? いらない? 最古の職業
- 7時間目 戦争と軍人
- 6月
- 放課後 似たもの親子 似てない親子
- 8時間目 「フツー」が世界を豊かにする
- 放課後 GDPとフツーの微妙な関係
- 9時間目 キーワードは「持ち場を守る」
- 放課後 健康で文化的な最低限度の家族団らん
- 10時間目 資本主義・社会主義・民主主義
- 7月
- 11時間目 働くということ
- 12時間目 「タマゴ」がわかれば世界がみえる
- 放課後 たかが500円、されど500円
- 13時間目 お金の借り方、教えます
- 放課後 宿題は借金100万円
- 14時間目 貸すも親切 貸さぬも親切
- 放課後 お金を「ふやす」は無理難題?
- 8月
- 15時間目 低金利の真犯人は「市場の力学」
- 16時間目 株式投資と「神の見えざる手」
- 17時間目 貧富の格差が広がる理由
- 放課後 福島家のいちばん長い日
- 放課後 アイスクリームのお返し
- 18時間目 6番目の方法
- 9月
- 課外授業
- あとがき
書籍紹介
金融や経済の知識をわかりやすく、かつ楽しく学べる一冊です。読者にお金にまつわる知識を身近なものとして紹介しています。
魅力的なストーリーテリング
本書は、架空のクラブで行われるお金の授業を通じて進行します。主人公の中学生・健太とその友人たちが、ユニークな先生からお金の本質について学ぶという物語形式で、経済の基本原則や金融の仕組みを自然に理解できる構成になっています。ストーリーテリングが巧みで、読者はまるで物語の一員になったかのような感覚で読み進めることができます。
教育的要素
高井さんは、複雑な経済理論や金融用語を中学生でも理解できるように解説しています。例えば、利子や投資、インフレーションといった基本的な概念を、具体的な例や比喩を用いて説明しているため、初心者でもスムーズに理解できます。また、実際の経済事象やニュースとも関連付けて解説されているため、読後には日常生活における経済の重要性を実感できるでしょう。
実用的なアドバイス
本書は単なる理論書ではありません。読者が実際に役立つアドバイスも豊富に含まれています。たとえば、家計管理の方法や、将来のための資産形成のヒントなど、具体的なアドバイスが満載です。これにより、読者は理論を学ぶだけでなく、実際の生活に活かす方法も身につけることができます。
結論
『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』は、金融や経済に興味がある全ての人におすすめの一冊です。特に、経済の基礎を楽しく学びたい方や、お金に関する知識を深めたい方にはぴったりです。高井浩章さんの丁寧な解説と魅力的なストーリーテリングを通じて、お金の世界への理解を深めることができるでしょう。
この本を通じて、あなたも健太たちと一緒にお金の秘密を学び、賢い経済人になる第一歩を踏み出してみませんか?
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
もうけは銀行家、損は国民に
リーマン・ブラザーズが破綻した際、世界中で資金の流れが止まりました。企業、個人、銀行が疑心暗鬼になり、資金を融通し合うことをやめてしまったのです。
その結果、企業や個人は資金を調達できず、世界恐慌の一歩手前まで追い込まれました。これを救ったのは、政府が銀行の負債を肩代わりすると宣言したことでした。その資金の源は、結局のところ国民の税金です。
この状況は、一部の銀行が他人のお金を使って大胆な投資を行い、利益が出た時は自分のものとし、損失が出た時は納税者に負担を押し付けるという、不公平なゲームのようでした。しかし、ほとんどの銀行家は、人々のために資金を回すという本来の使命に真摯に取り組んでいます。
私たちの社会は資本主義を採用しています。本来は、社会に貢献した企業や人々が正当な評価を受ける仕組みです。役立つものを提供することで富を増やすシステムなのです。
お金の貸し借り
借り手 現在、お金が足りてない状態。将来、利息をつけてお金を返さないといけない。
貸し手 現在、お金に余裕がある状態。将来、お金に利息がついて返ってくることを期待している。
今、お金がなくて困っている人に誰かがお金を貸します。借りた人はそのお金で商売を始めたり、車やマンションを購入したりします。そして、お金を稼いだら借金を返済します。貸した人は金利分の利益を得ます。悪くない話のように思えるでしょう。
しかし、これは借りる側が冷静で理性的な場合のみ、良い条件と言えます。理性を失った状態では、どんな悪条件でも受け入れてしまうことがあります。悪質な高利貸しは、利益を『増やす』というよりも、『盗む』といった稼ぎ方に近いでしょう。
株式投資と「神の見えざる手」
資産運用会社は、一般の投資家に投資信託という商品を提供しています。資産運用の目的は資産を「増やす」ことです。お客様からお金を預かり、企業の株式に投資して、資産を増やす役割を果たします。
銀行預金とは異なり、どれくらいお金が増えるかは預ける時点ではわかりません。運用が失敗すると、逆にお金が減ることもあります。
私たちが企業に投資することで、そのお金は企業の資本となります。企業はその資金を使って工場を建設したり、材料を購入したり、人を雇ったりします。そして、その資本を基にして元手以上の利益を生み出し、その利益は投資家、従業員、社会に還元されます。資本がなければ事業は成り立たないため、その資本を提供するのが投資家の役割です。
銀行から借金をすると、返済期限があるため、期限までに利息をつけて返済しなければなりません。利益を出すまでに時間がかかるビジネスや、現金がすぐに回収できないビジネスには厳しい条件です。
私たちが提供する資本は、企業にとって自己資本と呼ばれ、原則として返済の必要がありません。配当を出さなければ年間で固定のコストもかかりません。そのため、企業は工場や土地などの長期的な資産や、人材育成、研究開発に安心して投資できます。
信用創造
お金を借りるには信用が大事です。
銀行や個人の行為は、融資と預金に過ぎませんが、全体としてはお金が増えます。つまり、新たに創造されているのです。
預金者は銀行が約束通りにお金を預かってくれると信じているから預金します。これは一種の信用取引です。社会の信頼感を『創る』ことで、お金を集めることができています。
お金というのは、人々が生み出した知恵です。同じものに価値を認め合うという幻想に支えられています。『創る』という魔法でお金が円滑に回るためには、信用や信頼が欠かせません。お金は、人間が支え合わないと生きていけない存在であるが故に生まれた知恵の結晶だと思います。