じつはお金の本質が学べる落語の話/著者:田中靖浩、立川晴の輔

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書籍情報

タイトル

じつはお金の本質が学べる落語の話

発刊 2025年10月14日

ISBN 978-4-04-607180-4

総ページ数 245p

出版社リンク KADOKAWA

著者

田中靖浩

外資系コンサルティング会社などを経て独立。
会計セミナーといった固い仕事を話題を、ポップに解説する。

著者

立川晴の輔

落語立川流 志の輔一門。
関東5か所の定期独演会や全国で落語会を開いている。
『笑点』のメンバー。

出版

KADOKAWA

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 江戸の落語は令和の「新教養」
    • 落語の起源をたどるとお坊さんの説法だった
    • 会計士が語るテーマはすでに落語がやっていた
    • 落語家を目指す人はどうすればなれるのか
    • 見習いから真打へ、ステップアップのしかた
    • 上方落語と江戸落語はどのように生まれたか
    • なぜ同じ噺をしても面白い・面白くないがあるのか
    • 人間のダメなところを受け入れる懐の深さ
    • いつの時代もあったお金問題。幸せに生きるには
  • 第2章 お金の知恵が身につく落語入門
    • お金持ちになれたら幸せと思っている人へ → 水屋の富
    • リスクは避けられるものだと思っている人へ → 火焔太鼓
    • 商品の価格の決め方を知りたい人へ → かぼちゃや
    • 「信用」の意味がまだよくわからない人へ → 井戸の茶碗
    • 資産の使い方をあらためて知りたい人へ → 猫の皿
  • 第3章 仕事がらみの知恵も身につく落語入門
    • 過去にとらわれず明日を生きたい人へ → 千両みかん
    • 部下の能力がいつまでも見抜けない人へ → 抜け雀
    • 理想の上司像が見えない人へ → 百面目
    • ついケチになってしまう人へ → 片棒
    • いつまでも成長できないと悩んでいる人へ → 浜野矩随
  • 第4章 不安な人生を生き抜く術を落語から学べ
    • コミュ力を上げたいなら、一度、落語を聴くといい
    • テーマで人を呼ぶ講演、名前で人を呼ぶ落語
    • あえて言葉で伝えず聞き手に想像させる
    • パワポの資料より大切な「話す技術」
    • ブランドを守るとは、価値とは何か
    • 落語に感じた「スペキュレーション」とは
    • わかりやすい序列が崩壊して混乱する日本企業
    • 落語は人生の転機を迎えるたびに楽しめる
    • 実際に落語を聴きに行こう。そこから何を学べるか
  • おわりに

書籍紹介

 落語という伝統芸能を通じて、お金の深い側面を学べます。田中さんはビジネスマンとして落語に初めて触れた際、その物語の中にブランドや値決め、コンプライアンスなどのビジネス要素が隠されていることに驚いたそうです。そこで、立川晴の輔さんとタッグを組み、これまでセミナーや企業研修で培ったコラボレーションを書籍化したのが本作です。

 落語の起源や歴史を振り返り、なぜ江戸時代の落語が現代の「新教養」として役立つのかを対談形式で解説しています。落語はもともとお坊さんの説法から生まれたもので、時代を超えてお金の問題を扱っている点が興味深いです。

 2章では、一攫千金を目指す物語からリスクの避け方や信用の重要性、資産の賢い使い方を学べるよう工夫されています。3章では仕事、4章では人生や落語の楽しみ方がユニークに書かれています。

 この本を読むと、落語が単なる娯楽ではなく、人生の教科書のように感じられるはずです。田中さんのまえがきでは、落語の登場人物たちがお金に執着しすぎず、感じ良く生きる姿が描かれていて、現代の私たちに戒めを与えてくれます。笑いあり、感動ありの物語から、お金の本質を自然に吸収できるので、ビジネスパーソンやお金について学びたい人に特におすすめです。肩ひじ張らずに楽しめる一冊ですので、ぜひ手に取ってみてください。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

お金の噺

 誰しもがお金をたくさん稼ぎたいと思っています。生活に必要なものですから、根源的な人間の欲と言えます。落語に限らず、あらゆる国にあらゆるかたちでお金にまつわる話がありますが、そのほとんどが稼ぎ方に関するノウハウです。

 落語の噺では、お金が稼げなくても幸せだったり、日々を面白く過ごすことができる価値観を教えてくれます。世の中お金がすべてじゃないというけれど、それを教えてくれるものは少ないです。

 粋なところが江戸の良さですが、お金は貯まれば安心するものです。消費も大切ですが、本音では貯めたいとみんな思っているでしょう。ただ、それができない事情が江戸にはありました。江戸が発展していくと人口が増え、火事が頻繁に起きるようになりました。火消し隊などの活躍も有名ですが、多くの人が財産を失っています。そんなことから、「宵越しの金は持たねえ」と、あるうちに使うと考えるようになったのかもしれません。

 落語の噺では、成功する場合だけでなく、失敗してしまうものも多くあります。けれど、それを笑い飛ばせてしまう明るさがあるでしょう。金儲けが下手でも性格が良い人、貧乏でも幸せな人を落語から学べます。

火焔太鼓

 『火焔太鼓』は、商売下手の甚兵衛がボロボロの太鼓を持ち帰ってきて、妻に呆れられてしまう噺です。そのボロボロの太鼓は「火焔太鼓」という名品で、殿様に売れることで大儲けするという物語となっています。妻の態度が状況によって、ころころと変わることで、客席に笑いをもたらしてくれます。お金儲けの話にある感じの悪さはありません。

 予想外の儲け話と聞けば、怪しいと思うのが現代です。計画通りにいくことで安心する風潮があります。予定通りの現象は全て「良からぬこと=リスク」と捉えられている場合も多いです。リスクは事故や天才で損害が生じることを言う言葉として広まりましたが、今では予定外のことに使われるようになってしまいました。

 リスクの語源はイタリアの船乗りの名「リズカーレ」から来ています。勇気ある者という意味があり、「挑むもの」だったようです。あえて危険を漕ぎ出すから大金を手にできるといった精神に使われていました。予想外のことも歓迎し、リズカーレ精神があれば楽しく生きられるでしょう。

猫の皿

 掘り出し物を探して途中、ひと休みしようと茶屋に入った道具屋の男の話です。お茶を飲んでいると、餌を食べている猫の皿が「高麗の梅鉢」という高級品だと気づきます。そこで男は「この猫を三両で譲ってくれないか」と申し出ます。茶屋の主人は喜んでその申し出を受け入れました。

 しめしめと道具屋、「猫のエサを食べさせるのに慣れた皿のほうがいいから、一緒にもらうよ」と言うと、「それはできません。この皿は『高麗の梅鉢』という名品なのです」とお皿の価値を知っていました。「この皿で餌をやっていると、時々、猫が三両で売れるんです」

 バランスシートの資産は流動資産と固定資産に分かれます。流動資産は売却価格の期待値なので、現金に近い性質です。固定資産は長期に利用するものになるので売却しません。使用価値を測るわけです。

 お茶屋の主人は皿を流動資産として300両で売ることをせず、使用価値を見い出して固定資産としました。お茶屋のバランスシートには、猫の皿が固定資産として計上されていることでしょう。

人生の転機に落語

 8年ぶりに戻ってきたお客様をいかに引き止められるかを大切にしています。

 8年経つと「人生のステージ」が変化するのだと考えていて、結婚・子育て・引っ越しなどのストレスを感じたときに落語を思い出してくれるのでしょう。同じ物語だけれど、前と違う感覚を覚える自分を見つけられます。夫婦喧嘩、商売でうまくいかない、そんなときでも前向きにさせてもらえるでしょう。

 落語の良さを知るには、失敗の経験や辛い時期を体験してからかもしれません。人生経験が「沁みる噺」にしてくれる演目もあります。

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