リスキリングは経営課題

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

まえがき

 国際的に進むビジネスのデジタル。シフトや労働環境の変化を背景にして、各国の政府や企業が「リスキリング」を後押しする施策を次々に打ち始めています。

 リスキリングとは社会人の「学び直し」のことです。

 ですが、日本には学び直しの文化がありません。社会人になってから大学に入り直す人も、職場以外で自発的に学ぶ人も、先進国どころかアジアの中で比較しても最低水準です。

 学び直しを課題とする企業の担当者向けに、過去の実証的なデータをもとにした議論をしていきます。

書籍情報

タイトル

リスキリングは経営課題

日本企業の「学びとキャリア」考

第1刷 2023年3月30日

発行者 三宅貴久

発行 (株)光文社

装幀 アラン・チャン

印刷 近代美術

ISBN978-4-334-04652-1

総ページ数 331p

著者

小林祐児

パーソナル総合研究所上席主任研究員。

 NHK放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働、組織、雇用に関する多様なテーマを調査・研究しています。

出版

光文社新書

学び直さない要因

Image by David Mark from Pixabay

 就業者の「学び直し」への意欲へ大きく負の影響を与えているのは「仕事は運しだい」という意識です。偶然に左右されるという感覚は、主体的な学びの大敵になります。

 「地頭重視」生まれ持った知能は、ほとんど変えることができないという意識も影響しているようです。知能を変えようと努力しても無駄だと思ってしまっています。

 「ほどほどキャリア」因子を持つ人もいます。波風立てずに、仕事人生をまっとうしたいと思っている様です。今の仕事の規模が自分には合っていると思っています。

 この日本の中動態的キャリア「普通のキャリア」は、変化し続ける環境と企業の人材マネジメントと相性が悪いのです。

「孤独」が学びを遠ざける

Image by Grae Dickason from Pixabay

 日本人は、世界でもトップクラスの「他者への信頼のなさ」との評価です。言い換えれば「社会開拓力」を持っていないことを意味します。

 日本人は、たまたま出会った見知らぬ他人と仲良く継続的な関係性を築いていくといった行動ができません。これが「当たり前」になっています。

 私たちの生活は、SNSやオンラインゲーム、音楽や映画のサブスクリプションなど、インターネットを通じたサービスによって、ある程度楽しく暮らせているのです。

 私たちは、社会開拓して楽しく生きる術を知っています。

 今までのような、他者を信頼しないコミュニケーションの文化では、ラーニング・ブリッジング、ソーシャル・ラーニングといった社会関係資本の基本構築なされないのです。

学びの記録システム

作者: ショコラ

 今はLMSのようなオンライン学習プラットフォームが格安で利用できるようになりました。

 課題や試験の成績やアセスメントなどを組み合わせることで自分の進歩を確認できます。どんな研修訓練も、記憶として定着し、業務の変化につながらなければ意味がありません。

 また、学習管理システムの履歴機能が、研修後適宜のフォローアップ、期間をおいたトレーニングデザインなど、橋渡しを促すためのサポートに使えます。

 そして「伸び」を実感することで学びのモチベーション維持に繋がり、個人のスキルが定着します。

 研修や学びの機会は、企業のなかで優先順位が下がりがちです。組織側から学びへと従業員を「迎えに行く」ような姿勢が必要だと思います。

「社会」は最後のブルーオーシャン

Image by Michael Schwarzenberger from Pixabay

 日本の大人たちは、「社会」を自ら開拓する能力に欠けています。「周囲の友人が結婚して、遊ぶ人がいなくなった」という言葉を聞くことがあるかもしれません。本来なら20代前半までに蓄積される「社会関係資本」を、徐々に目減りさせているのです。

 友人が減り続けるということは、孤独を呼び寄せることになります。社会関係資本が欠如したリスキリングは「引きこもった専門家」を作るだけです。社内外でネットワークが構築できず、重要な「他者」という契機を全く活かせません。

 「人的資本」という概念は人的投資を引き出す旗印として利用しつつ、「人こそ資本」という発想を社会ネットワークへと拡張させた仕組みづくりが必要です。

 社会に生きる人にとって、望まない孤独は、もっと直接的に人の人生を不幸にしてしまいます。

 そんな社会だからこそ、「社会」というものは最後のブルーオーシャンだと考えています。

 他者とのつながりが希薄な世の中で、他社との関係へと踏み出すことの意味は強度が上がっていると感じるのです。

 学び、仲間を作れば、人生を豊かにすると信じています。

あとがき

 社会学の大学院を出た後、最初の社会人経験は、NHK放送文化研究所での世論調査業務のサポートでした。実際に住宅街を歩いて現場を回り、多くの調査員への説明会を準備したのです。今やどこにでもあって活用と叫ばれる「データ」というものが、いかに地道な作業の積み重ねから作られるものなのかを身をもって経験しました。今でも研究者としての礎となっています。

 調査という生業が共通しているからこそ、その具体の在り方の違いに驚きます。過去のやり方は、都度捨てていくアンラーニングしていくしかなく、前のやり方にこだわる余裕はありませんでした。

 人を巻き込んでいくのは、自分の学びを広げる工夫の1つです。

 今の多くのリスキリング議論が「稼げるスキル」を羅列することになっています。そのスキルに満足し、その「リスキリング」ブームが去ってしまうと壁にぶつかるでしょう。

 すべての実証は実証しつくせないものを生み出すのです。議論を積み重ねることによって、社会人の学びへの知見がさらに分厚いものになればと思います。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 横のつながりを強くしていけば、学びを広げることに繋がるようです。実際に学びを広げる人は少ないので、日本ではブルーオーシャン戦略となり、頭一つ抜け出せると思っているとも言っています。

 世の中の成功者は、社交的な人が多い印象があります。周りも放っておかないからというのもあると思いますが、地道にネットワークを築いて成功を収めた後発的な成功者もいらっしゃいます。

 学び直して、常に情報やスキルを最新のものにしておかなければならないようです。成功への道は、大変に険しいものだと思います。そして、それを従業員に促していく重要性が語られました。

 リスキリングを経営に組み込む大切さと難しさを感じさせていただいた気がします。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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