目次
書籍情報
タイトル
プロセスエコノミー
著者:尾原和啓(おばら かずひろ)
ヒューチャリスト、藤原投資顧問 書生
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラブラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外商政策委員、産業総合研究所人工知能センサーアドバイザー等を歴任。現職は14職目。シンガポール、バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリストでもある。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に参加するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書『アフターデジタル』(共著、日経BP)は当時の経済産業大臣・世耕氏により推挙。『モチベーション革命』(幻冬舎NewsPicks Book)は2018年Amazon Kindleで最も多くダウンロードされ、中国・韓国・台湾で翻訳。『ITビジネスの原理』(NHK出版)は2014年、2015年連続売り上げTop10入りのロングセラー(2014年7位、2015年8位)、韓国・中国で翻訳。『ザ・プラットフォーム』(NHK 出版新書)はKindleビジネス書1位、有名書店総合1位のベストセラー。
後ろのそでより抜粋
出版
幻冬舎
内容
”良いもの”を作るだけではモノが売れない時代になりました。
ヒット商品を生み出しても、後発でほかの会社が似ているような商品を売り出します。気づけば、安売り競争でへとへとになっています。
個人のクリエイターでも同じです。世界中の人がすぐに情報を発信できるため、似たようなものであふれてしまいます。
そこで、プロセスエコノミーです。プロセスは真似できません。
ファッションで言えば、サスティナブルブランドが最近のトレンドです。作る工程や原価率、環境を破壊していないか、過酷な労働で作られたものではないか、情報公開されているブランドです。
マンガ家であれば、マンガを売るのではなく「マンガを描いている姿をライブ配信して、投げ銭してもらう」イメージです。
今の時代は、新しくファンを獲得していくことが大切なのです。
本書では、プロセスエコノミーの未来予想図についても解き明かしていきます。企業や会社、そして個人がいかに変わっていくのか。「本書を通じて、新しい風を、ポジティブなメッセージ受け取っていただけたら幸いです。」と著者は語っています。
プロセスになぜ価値があるのか
30代以下の世代が求めるもの
30代以下の世代は、生まれたときから社会に「ないものがない」時代で育ってきました。家具、家電、コンピューター、携帯電話、ゲーム機も全て充実しています。
ものが充実している環境で育った世代は、物質的なものより内面的なことに価値を感じているのです。良好な人間関係、意味合い、夢中になれるものを重視していると言えるかもしれません。
「役に立つ」より「意味がある」ものを選ぶ
コンビニエンスストアで置かれてるハサミは、1種類のみです「役に立つ」ものは1つでいいのです。
車であれば、「役に立つ」車はプリウスのみでいいということです。フェラーリやBMWといった高級車が選ばれるのは、「意味がある」からなんです。
消費者は所属欲求がある
自分の所属欲求まで満たしてくれることを、ブランドに求め始めているのです。
都市部では「隣に住んでいる人の顔も名前も知らない」という、人類史上初めての状態に突入しました。今や近所づきあいをしなくても、生きていくのに困りません。下手に、近隣住民と仲良くしてしまうと、トラブルが発生するリスクさえあります。
今まで、アイデンティティを満たしてくれていた、家族、ご近所、会社がすべて希薄化しています。代わりに所属欲求を満たす消費活動を、求めるようになってきたのです。
ネット上のコミュニケーション
生まれたころからインターネットと繋がっている若い世代では、「フォートナイト」「スプラトゥーン」「モンスターハンター」などのオンラインゲームで、知らない人とチームを作り、コミュニケーションを取ることに慣れています。ゲーム内で自分がどう立ち回ったらいいかの判断が鍛えられているのです。プロセスエコノミーとの距離はどんどん近づいています。
フィリップ・コトラーの「マーケティング4.0」
「近代マーケティングの父」フィリップ・コトラーの理論は、プロセスエコノミーについて考えるうえで、役に立ちます。
- マーケティング1.0 製品中心のマーケティング 機能的価値訴求
- マーケティング2.0 顧客志向のマーケティング 差異的価値訴求
- マーケティング3.0 価値主導のマーケティング 参加価値訴求
- マーケティング4.0 経験値志向のマーケティング 共創価値訴求
マーケティング1.0では、とにかく必要な製品があれば喜んでもらえます。高度経済成長期にはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、と「3種の神器」とキャッチコピーをつけて、売りに出していました。
マーケティング2.0では、花粉症に悩まされている方向けの空気清浄機や、お酒好きのための冷蔵庫、といったターゲット決めていかないとものが売れなくなりました。
マーケティング3.0では、「社会問題や環境問題に対して、私たちは貢献しています。」のような、社会貢献を構築する主体性を発信して、ファンを獲得するようになります。
マーケティング4.0では、消費者もメーカーの活動に参加し社会変革に挑戦していく世界です。企業と一緒にプロセスを歩むことに価値を感じ始めていることを指摘しているのです。
プロセスエコノミーの実践
従来のものを作って売る、という呪縛から抜け出さなければなりません。意識をプロセスエコノミーに変えていく必要があります。
情報をフルオープンにして旗を立てる
新しい技術やアイデアなどを表沙汰にすることですから、他社に模倣・追随される可能もあります。それでも、情報をフルオープンにするメリットは大きいのです。
「新しい情報を自分だけが見つけた。」と過信すること自体がアウトです。情報それ自体に価値はありません。
手持ちの情報をシェアすると、仲間を作ることに繋がります。プロセスを惜しみなく開示することで、さらなる情報が集まってくるのです。結果的に、自分にとって得なのです。
情報を開示し旗を立てたとします。やがて、立てた旗に注目が集まり、情報リッチになれるのです。
「Why」の価値
ただ単に商品の制作プロセスをオープンにするだけでは、なかなか人は魅力に感じてくれません。誰もが「インフルエンサーになりたい」と思うなかで、平凡な発信では生き残れないのです。
プロセスエコノミーを実践する上で最も大切なのは、あなたの中にある「Why」をさらけ出すことです。「Why」とは、なぜやるのか、哲学やこだわりがあるのか、といったことです。
「What」を伝えるのが上手い学習系Youtuberは、既にレッドオーシャン状態で、普通に発信しても見つけてもらうことすら難しくなっています。
矢沢栄吉さんには、根強いファンがいます。にわかファンが少ないのです。
矢沢栄吉さんはステージに立つまで、細かすぎるこだわりがあります。「お酒は、ライブが終わるまで厳禁」ルールも徹底していることで有名です。ファンはそんな哲学に惚れ込んでいくのです。
楽天で人気店になるためには
ネット通販ならば、楽天よりもAmazonが便利で早いです(安いかと言われると微妙)。不便な楽天で買い物するのはなぜでしょうか?
消費者は、無味乾燥な買い物をしたいわけではないのです。商店街で店主の顔をみて、説明を聞きながら欲しいものを探したいのです。
人気店になるには3つのポイントがあります。
- マイクロ・インタレスト 自分ならではのこだわり
- コミットメント やりきる責任感
- 弱さの自己開示 ちょっとした失敗
異常なほどワインに詳しい店長、現役バリバリの古書専門の古物商、高級コンデジに限定したカメラ店、などこだわりが感じられるマイクロ・インタレスト。
丁寧な梱包や、納品までの速さの実績を積み重ねると、お客様からレビューがつきます。コミットメントは、関心から信頼へとかわっていくのです。
メルマガや商品に同封されている礼状には、販売する中でしくじった経験を載せていることがあります。「メチャメチャがんばって、このワインを日本にもってきました。」「マニュアルフォーカスができる高級コンデジのみを仕入れています。関東関西の古物市場のを巡っては空振りの連続です。」などです。弱さをみせると、人間味を感じて、応援したくなります。
共感してもらうことが大切なのです。
ジャニーズ事務所のファン戦略
SMAPや嵐のメンバーが、いきなり華々しくデビューしたわけではありません。人気グループのバックダンサーをして下積みを経験します。デビューを夢みるメンバーのプロセスを、ファンはを応援するのです。
コンサート会場で最前列に並んでいた人が、帰りの電車で同じ線路になるように、チケット配分をしていたという逸話もあります。
最終成果物の音楽が無料で聴けるようになった結果、音楽マーケットは縮小していると思われがちです。しかし、ライブや生配信などによる、グッツや投げ銭などの売り上げは伸びています。
メルカリでは野菜を売る
かしこい農家は、メルカリを産地直売のお店として使っています。新鮮な野菜を、消費者は安く買えるのです。
農家にとっては、農協やスーパーを介さなくていいので、メルカリに出品する手間分だけ、利益を多くとることができます。
農家にとっての最大のメリットは、生産者のファンが増えていくことです。
創業9年で10億ドル企業になった「Zappos」
ネットECサイトでは、広告費がたくさんかかるため、手数料が高くなりがちです。
プロセスエコノミーを進める中で仲間が増えていけば、流通を抑えたり、客を集めるための宣伝費にお金を支払うこともありません。浮いたお金で、商品の開発や品質向上に投資することができます。企業にとってもお客さんにとってもwin-winです。
靴とうい商品は実際に履いてみないと履き心地がわからないため、最もECに合わないと言われる分野でした。にもかかわらず、Zapposは、創業から10年問経たないうちに、年間10億ドルを達成します。
Zapposの仕組みは、チャットでお客さんが「こんな靴を探しています。」と詳細な要望をだします。要望にあった靴がZapposの在庫に無い場合は、お客様の住んでいる近所のエリアの靴屋に電話して、お目当ての靴を探し出し、「ここのお店でピッタリの靴を確保しました。いかがでしょうか。」と教えてくれるのです。
Zapposの親切は口コミで広がり、お客様の層は3/4がリピーターとなっています。
Zapposの広告費は売り上げの1%です。広告に使っているCMは「こんなにも顧客のことを愛している。こういう従業員がいてくれて私はうれしい。」と、従業員をホメちぎるイメージCMを打っています。
2009年にZapposはAmazonに買収されますが、「経営と文化に口を出すな。」と強気の条件をだして、傘下に加わっています。Zapposは買収されてからも、企業文化を守っています。
プロセスエコノミーのデメリット
「Why」を見失う
プロセスで稼げてしまうと本来の「Why」を見失ってしまうケースがあります。
プロセスを上手に開示することによって実力以上に資金やファンを集めてしまう。すると、どんどんプロセスの刺激を増やしていかないと、次に続かなくなってしまいます。
人気が高くなってきて、批判的な人に追い詰められたりすると、「わかる人にだけわかればいい」というスタンスに変化してしまいます。自分は何のためにやるのかが置き去りにされてしまっています。
自分のモノサシがぶれる
プロセス配信がやっとファンが増えてきました。そんなとき、チップを投げてくれた人に答えようとうとして、視聴者側に寄りすぎてしまうことがあります。最初は喜んでいたファンも、次第に「あれ?」と違和感を感じます。
その人にしか持っていないモノサシに惹かれて、視聴者は応援してくれているのです。
SNSがもたらす肥大化
栗原史多さんは、酸素ボンベを使わずに山を登り続ける様子を、ネットで配信しました。
登山の過酷な様子は、ネットを通して熱狂をあつめ、結果的に自己演出に拍車がかかり過ぎました。最後はほぼ自殺に近い最後だったようです。
気をつけないと、プロセス自体に自分の人生が操られてしまいます。
「Will」「Can」「Must」の順番を間違えない
プロセスエコノミーには大きな夢が必要です。
- 「Will」……将来やりたいこと
- 「Can」……自分にできること
- 「Must」……やらなければならないこと
今はSNSを眺めていても、書店の棚にいっても、「好きなことでいきていこう」「やりたいことをみつけよう」と「Will」ばっかりが目につきます。悲しいです(著者の感想です)。
仕事の順番は、「Must」→「Can」→「Will」の順番です。やらなければならないことをして、できることを増やしていって、やりたいことをやる。これが一般的な形です。
「Will」が見つかっていない人も問題ありません。「Must」こなしていった上に「Can」が増えていき、やがて「Will」に出会えればいいのです。
プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか
夢中になれる3条件
楽天大学学長の中山進也は、人が夢中になれるには3条件あると語ります。
- 得意であること
- やっているだけで、楽しいこと
- それが誰かの役に立つこと
変化の時代は、どこにゴールがあるのかわかりません。ただ楽しいから走るひとが、思わぬ結果を生むのです。
時間を忘れて集中する。ますます成長する。やりたい、得意なこと、が増えていきます。
夢中になって仕事をしていると、他の人も夢のなかに巻き込んで、周りを夢中にする大きなところまでたどりつくのです。
自分がつくりたいものを作る
私たちは「こうすればバズる」「こういうのが流行る」というものをひたすら作る機械ではありません。
私たちは作りたいもののために、命を燃やすべきなのです。
プロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、1人1人の武器になっていきます。
より創造的でよりワクワクする未来のために、あなたのこだわりをさらけ出しながら走りましょう。こころから応援しています。
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