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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
プロローグ
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、女性たちはさまざまな権利を手に入れるために立ち上がりました。
相続権、財産の所有権、起業する権利、お金を借りる権利、就職する権利、同一労働同一賃金。お金のためではなく愛のために結婚できる経済力。
フェミニズムは今も、お金をめぐって進行しています。
本書が描きたいのは、誘惑の話です。ある経済学の見方が私たちを狡猾に言いくるめました。私たちの中にもぐりこみ、ほかの価値観を制圧し、世界経済にとどまらず私たちの日常をも支配するようになります。それは男女についてのお話です。おもちゃに現実の力を与えると支配されてします。
書籍情報
アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?
これからの経済と女性の話

第1刷 2021年11月30日
訳者 高橋璃子
発行者 小野寺優
発行 (株)河出書房新社
組版 KAWADE DTP WORKS
印刷・製本 三松堂(株)
ISBN978-4-309-30016-0
総ページ数 284p
カトリーン・マルサル
英国在住のジャーナリスト。スウェーデンの大手新聞Dagens Nyheter紙記者。
政治、経済、フェミニズムなどの記事を寄稿するほか、ミシェル・オバマへの単独インタビューなども担当しています。
河出書房新社
食事を作ったのは誰か

アダム・スミスは自由市場こそが効率的な経済の鍵だと説きました。自由と自律を推進する彼の思想は画期的です。市場が自由に動けば、経済は効率よく回りだし、利己心を燃費にして働きつづければ、みんなが必要なものを手に入れられます。キッチンの棚にはパンがあり、電気はいつでも流れていて、今夜の食事にもありつけます。利己心が世界を動かすと、初期の経済学者はそう確信しました。
アダム・スミスはテーブルに並ぶ夕食に、善意を感じていない。肉屋やパン屋の利益になるから、自分が食事にありつけるのは彼らの利己心のおかげだと考えています。
本当にそうだろうか。そのステーキは、誰が焼いたものでしょう。
アダム・スミスは生涯独身でした。人生のほとんどの期間を母親と一緒に暮らしています。母親が家のことをやり、いとこがお金のやりくりをしました。アダム・スミスがスコットランド関税委員に任命されると、母親も一緒にエディンバラへ移りすみ、死ぬまで息子の世話を続けています。
毎朝15キロの道のりを歩いて、家族のために薪を集めてくる11歳の少女がいます。彼女の労働は経済発展に欠かせないものですが、国の統計には記録されません。GDPは、この少女の労働をカウントしていないのです。
子どもを産むこと、育てる事、花や野菜を植える事、アダム・スミスが執筆できるように身の回りの世話をすること、それらはすべて経済から無視されています。
女性はなぜ収入が低いか

男性はいつでも利己的にふるまうことが許されてきました。経済にしても、セックスにしてもそうです。女性は、誰かのために世話をすることと社会に言い続けられ、利己的な行動が取りにくくなっています。
女性が欲望をあらわにすると、きまって批判されます。脅威となり、不自然なのです。
世の中は合理的にできていると経済学者たちは考えました。市場が女性の賃金を少なく計算したなら、それが彼女にふさわしい金額にちがいないというのです。疑いを持つことでなく、市場の判断を正当化することにありました。
出産と育児キャリアを中断し、女性は仕事にリソースを投入しなくなると、結果として賃金が安くなると考えたのです。
彼らの説は、現実と照らし合わせると、何かがおかしいのは明らかです。
自分への投資

1950年代末のアメリカの経済学者たちは、「人的資本」を持ちこみました。人の教育やスキルや能力は一種の資本という考えです。スキルアップのためにお金を使うことは、将来のための投資になるといいます。
人間を資本に変えることで、労働と資本の対立を解決しています。人生は投資であり、投資がその人の市場価格を左右するということです。
職業安定所に並ぶ女性も、ビジネスクラスで会議に向かいながら睡眠をとるCEOも、バングラデシュでニセのパスポートを待つ男性も、みな起業家です。違いは資本に対する投資戦略だけで、開業資金に違いはあれど、投資に成功すれば挽回できます。
豊胸手術は投資だ、とある女優は言いました。見かけは違っても、その本質はすべて経済なのです。人生とは自分の価値は増やすための投資の連続です。
こうした考えを、真剣に受け止められるだろうか。
女らしさに依存

男らしさや女らしさは、現実よりもむしろ社会の期待を反映したものです。みんな社会の期待に合わせて行動します。
女性は男性に負けていない。
女性は男性を補完できる。
女性にも男性くらい価値がある。
こういった物言いの基準にあるのは男性です。男性側、「経済人」の視点となっています。
こうした経済人の言葉が心をとらえるのは、人的資本をうえで不安から避難させてくれるからです。人の感情を好みに変えます。
経済理論は私たちの隠れ家です。私たちはそこで、社会の語る物語に耳を傾けます。心地よい物語に、安心できる物語です。
ただひとつの性、ただひとつの世界。
エピローグ
彼女の名前は、マーガレット・ダグラスといいます。
アダム・スミスの母親です。
28歳で未亡人となり、息子のアダム・スミスが父親の遺産を受け取りました。マーガレットが要求できるのは3分の1だけです。このときから彼女は、経済的に息子に依存することになりました。
そして息子のほうも、母親が死ぬまで依存し続けます。
2008年の金融危機は私たちの経済観をくつがえすかに思われたが、結局ほとんど何も変わっていません。銀行が潰れても経済の神話は残りました。経済人の影響力は大きなものです。
本書の議論は、母親を視界から消してしまった結果、アダム・スミスの思想から何か大事なものが抜け落ちてしまったのではないかということです。
欠けていたパズルのピースは、マーガレット・ダグラスにあります。
現代のマーガレット・ダグラスは、仕事を減らして孫の世話をする女性にあたるでしょう。自分がやらなければ誰も面倒をみられません。
経済人に別れを告げて、もっと多様な人間のあり方を受け入れられる社会と経済をつくっていきましょう。
感想

サイト管理人
割と関係ない2つの事柄をくっつけて考えると、新しい考え方が生まれます。経済の話から、女性が活躍できるための基盤や、男女を識別しない働き方まで考えさせられるものになってました。
今の職業でもフレキシブルな職場が存在します。女性が上司というのも珍しくなくなっているように思います。そして、女性で起業した人の書籍なども出回るようになりました。
より多様な社会になっていくことによって、女の子だからできない、しっかりしろ男だろう、という事も無くなってくるのかなと思います。重いものだから男性に仕事、業務の仕事は女性が適任というのも、未来では当てはまらないのかもしれません。
考えすぎのような気もします。大きな声になって女性社会擁護集団が作られてもいません。女性の雇用先がないというわけでもないのです。
「依存」しなければならなかった。と書かれていますが、本人たちにとっては「協力」しあっていたのかもしれないですし、母親が不幸だったわけでもないかもしれません。(凄く一緒にいるのが、嫌だった可能性もあります)
ちょっと膨らみ過ぎて、妄想の域入ってしまっている気もします。
けれど、女性のフラストレーションはこういった問題意識もあるということを頭に入れておきたいと思います。
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