世界の神獣・幻想動物/ボリア・サックス

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書籍情報

タイトル

図説 世界の神獣・幻想動物

ファンタジーの誕生

発刊 2023年7月31日

ISBN 978-4-562-07297-2

総ページ数 273p

著者

ボリア・サックス

 ニューヨーク州立大学で博士号を取得(歴史・ドイツ文化)。ニューヨーク市のマーシー・カレッジで文学を講義しています。文化人類学に含まれる「人類動物学」の専門家。邦訳書に『ナチスと動物』のほか、著書多数。

訳者

大間知知子

出版

原書房

もくじ

  • 第1章 本物の一角獣
  • 第2章 動物との遭遇
  • 第3章 「幻想動物」とは何か
  • 第4章 実在の動物はすべて空想的である
  • 第5章 幻想動物はすべて実在である
  • 第6章 怪物たち
  • 第7章 驚異の生き物
  • 第8章 水の生き物

本物の一角獣

17世紀初めまでに、教養のある人々の間では一角獣の存在への疑いが広がっていました。

 本物の一角獣に関しては、この世には数多くの証拠があるのだが、その角の尊さゆえに、人々は疑い続けてきました。神の御業を眺め、その偉大さを信じることから目をそらすこのような所業を見るにつけ、どうやら人間の内なる堕落した性質の中に敵が潜み、絶えず人間に対する神のまなざしを遮っているように私には思われる。

エドワード・トプセル牧師『四足獣・爬虫類・昆虫誌』より

 この文章に対して疑念を持つ者は悪魔に憑りつかれているとしながらも、トプセルはかなりリベラルな人柄で、日常的に魔女狩りにいそしむような人物ではありません。

 ヨーロッパ全体で宗教紛争が起きる中、事前界の中に神の教えを読み取ろうとして、古い書物に記録された動物の伝承を研究していたのです。

 一角獣は古代の神学者によって語られ、2世紀の終わりにアレクサンドリアのディデュモスによって書かれた『フィシオログス』という有名な書物に登場します。一角獣は力ぞくでは確保できないが、乙女に対しては、おとなしく従うのだそうです。乙女に聖母マリアを、一角獣にキリスト重ね合わせたような物語となっており、それに激怒した教皇ゲラシウス1世は『フィシオログス』を協会の禁書リストに載せました。

 けれども、一角獣の神話は写本が作られたり、口伝して広く伝わりました。一角獣の伝承は、騎士道の風習、宮廷風恋愛にも反映されるようになっていきました。15世紀末頃に制作された『一角獣狩り』というタペストリーにはキリスト教の終末を彷彿させるものとして、傷を負った一角獣が描かれています。

ドラゴン退治

 これまでに物語や本から幻想動物を追放しようとした支配者や聖職者はいましたが、誰ひとり成功に近づいた者はいません。

 すべての社会が空想的な生き物に寛容ではないのです。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教社会は特に、幻想動物の偶像崇拝、そして悪魔の所業とさえみなしていました。古代ギリシア・ローマなどの社会でh、幻想動物はしばしば自然界や人間の形態への冒涜として、野蛮、不気味、非合理的とみなされていたのです。

 悪魔の象徴とされた怪物は、最終的に人間が倒して勝利しなければなりません。しばしば、厄災の兆候として表れていました。危機的な時代になると、幻想動物や怪物の報告が急激に増加するのです。

 聖書の『ヨハネ黙示録』では、悪魔は大きな赤いドランゴンの姿となって点に現れ、7つの頭と10本の角をもち、尻尾で星ぼしを粉々する力をもっているといいます。次々と謎の封印が解かれて、最終的に火の海となったところに獣と予言者と罪人といったものが放り込まれて永遠を過ごすことになるのです。最終的に正しい人々のために新しいエルサレムが創造されるというイメージを伝えました。

 『ヨハネの黙示録』は2000年にわたって伝統的キリスト教に広がる図像の大部分を確立し、政治宣伝からホラー映画まで、幅広い世俗的活動にも貢献しました。

 日本や中国では、狐が人間に変身する物語がたびたび語られています。人間に変身してイタズラをしたり、恋愛しました。報酬と引き換えに人間の手足となって働くといったものもあります。

 狐は道の稲の女神として祀られています。日本全国に数えきれないほどの神社があるのです。稲荷神社はたいてい田畑の近くにあり、収穫期が近い時は特に食べ物が盛んに供えられます。

 狐は魔力があって賢く、むやみに人を驚かすことがないと言われているようです。狐も人間のように喜怒哀楽を感じ、傷つきやすいとされています。

 日本の民話では、狐は絶えず人間と取引をして、争ったり、愛し合ったりしますが、両社はたいてい、ほぼ対等な力関係にあります。人間の技術と狐の魔術が競い合って、結局は知恵が勝敗の決めてになっています。

電子的な動物

 「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代が、テレビやビデオゲームの中で電子工学的に創造され、ますます生き生き動き始めた幻想動物に囲まれています。

 人間のテクノロジーは常に主として動物を模倣する形で創造されていました。先史時代の道具は鳥のくちばしをモデルに作られ、罠の技術はクモの巣からイメージされています。ダムの発想はビーバーの習性から生まれたものという逸話もあるのです。

 今日では、航空エンジニアはトンボなどの昆虫が空中の1点にとどまり、どの方向にも自由自在に移動できる能力を研究しています。

 今では人間の感情を真似するように設計されている電子ペットもあります。たまごっちは中央にスクリーンがついたカラフルな卵型の手のひらサイズのコンピュータで、およそ3000円で購入できます。卵から孵り、名前をつけるように促され、デジタル上で餌を与え、運動させ、一緒にあそび、排せつ物の処理をするといったゲームです。この電子ペットは「人格」があるように振る舞い、掘っておけば不機嫌になり、甘やかせば肥満になります。雄と雌を通信で結婚させれば、新しい子まで産めるのです。たまごっちはバンダイによって日本で開発され、1996年の発売以来、累計販売数は1億個ほどです。

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