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目次
書籍情報
テーマパークのプロの感動をつくり出す仕事
なぜ、ゲストはリピートするのか?
松本公一
2001年に独立し新会社ドリームスタジオの代表となる。
全国のテーマパークの開発に携わっている。
KODANSHA
- はじめに
- 100人前後の小さな会社が、なぜ業界最大手を圧倒できたのか
- 失敗の連続を経て「古い自分から新しい自分へ」
- 失われた30年、底辺からの出発
- アメリカのレジェンドたちから学んだ「真のゲスト目線」
- あなた自身を「真のゲスト目線」にする方法
- 序章 クリエイターの「直球」の思考法
- 潜在力が上がる「今からやろう会議」
- 「見ているか見ていないかは天と地ほども違う」
- 「自分にとって面白いもの」は何か
- どうやって社員それぞれが覚悟と勝ちグセをつけたか
- 安心感と自由な発想を生むトップの3つの役割
- 第1章 ゲストを感動させる「こだわり」 ―「ルパン三世~迷宮の罠」
- ロングランのアトラクション誕生の秘訣
- 東京ドーム地下遊園地のコンペに挑戦
- つくり手チームとライセンサーのぶつかり合い
- ライセンサーならではのアイデアが光った瞬間
- 「ゲストに面倒なことはさせない」という鉄則
- 「メリハリをつけよう」はよい発想の敵
- 無一文になると言われたウォルト・ディズニー
- 合理的に考えているつもりが「妥協」になる
- エレクトリカルパレードの演出家が見せたこだわり
- 日本人のノリを見誤った!
- プロの小集団がつくり出した最高傑作
- 「抜け感」が素敵なアメリカのクリエイターたち
- こだわりの「相場観」を見誤るとき
- つくり手は「絶対ウケる」と思ったのに…
- ハリー・ポッター人気にあやかろうとして大失敗
- 大人が喜ぶと想定した迷路に殺到した子どもたち
- こだわっているうちに基本を見失った失敗
- 成功体験で自信過剰になって、大損失
- ロングランのアトラクション誕生の秘訣
- 第2章 価値消費の時代のキーワードは「感動」 ―ゲストひとりひとりが喜ぶ方法はある
- 集団ではなく、「個」から「ゲストの心理」に迫る
- 社員全員が辞職!?!? 人の本音を知る難しさを痛感
- 失敗の原因は前職の企業風土を引きずっていたため
- スタッフの向こうにゲストの顔が見えてきた
- ゲストの期待をいい意味で「裏切り、本音に近づく」
- ひとりひとりが喜ぶ「共有」と「選択」の組み合わせ
- 東京ディズニーリゾートの救護室での体験
- 記憶に刻まれる「リアルな肌感」
- 過去最高益の日米テーマパークと新テーマパークの内容
- 豪華客船の醍醐味は桟橋での見送りだった
- 子ども心に焼きついた横浜港での涙の光景
- 「欲求5段階説」からリピーターの心理を読み解く
- 集団ではなく、「個」から「ゲストの心理」に迫る
- 第3章 心を動かす「驚き」「発見」のつくり方 ―「ジュラシック大恐竜展」
- 一度体験したらリピーターになるアトラクションの舞台裏
- 恐竜時代再現への挑戦
- 古生物界のインディ・ジョーンズと呼ばれる博士の協力
- 目の前にエイリアンを飛び降りさせる
- ここまで徹底した安全確認は見たことがない
- 日本初、奇想天外なライドの発案者
- ロビーを毎日カモが行進するフロリダの高級ホテル
- 行動経済学を超えた「価値提供ビジネス」
- 得した嬉しさよりも、損したがっかり感のほうが強く残る
- 「価値提供ビジネス」における深感動
- 人はどうしたら「感動」するのか
- グリコのオマケが人の心をつかんだ理由
- クリッターカントリーでの「思いがけない発見」
- ヒマワリ畑の2cmの恋人たち
- ロサンゼルスのドアマンにまんまと一本とられた話
- 一度体験したらリピーターになるアトラクションの舞台裏
- 第4章 「失われた20年」に唯一右肩上がりを持続 ―「スパリゾートハワイアンズ」
- 賑わいを維持する三大要素
- どんな施策が奇跡を起こしたのか
- 週末対平日の来園者数が2対1を達成
- 本場にも匹敵、圧巻のハワイアンショー
- これでもか! 終日楽しめるサービス精神
- 東日本大震災と新型コロナという苦境
- 「定住圏」の顧客で利用率を上げる
- ゲストをかたまりでなく、「個」として向き合う
- 儲け後回し戦略のザッポスをAmazonがなぜ買収?
- サービス業はいいか悪いかの二択
- 賑わいを維持する三大要素
- 第5章 値下げは禁物、値上げしたら殺到 ―「価値提供ビジネス」から見た価格と口コミ
- 価格に見るゲストの心理
- 値下げで失敗したハウステンボスが次にとった戦略
- 18年連続の赤字がわずか1年で黒字転換
- 次々くり出される斬新なコンテンツ
- 新生ハウステンボスの「わかりやすさ」
- 遊園地が嘆いた「無料券の入園者はもういらない」
- 消費者が認める高品質価格と夢充足価格
- ディズニーの日米価格差は2.5倍
- 東京ディズニーリゾートの値上げの目的
- 思い知らされた「ロコミの力」
- 「倉敷チボリ公園」が開園3年過ぎて来場者急減の理由
- 本家チボリパークは市民リピーター年間400万人
- 開業日に失敗か成功かが予測できる
- 「デロリアンで空を飛んだ!」と思った人のロコミカ
- 「からだのひみつ大冒険」の口コミの記録的広がり
- テレビCMより直接ターゲットへ宣伝した反響
- 集客のための宣伝は「シンプル」「わかりやすさ」「具体性」
- 価格に見るゲストの心理
- 第6章「物語」は最強の武器 ― 主力は世界観を持った「ランド」開発に
- 「物語」はテーマパークの必須条件
- 人は本質的に「物語が好きなDNA」を持っている
- 宇宙のテーマはウケないと証明したスペースワールド
- 「ハリー・ポッターランド」がもたらしたランドブーム
- 「スパイダーマン」でユニバーサル・スタジオ・ジャパンは復活
- 「不思議の国のアリス」は版権フリーの最強の物語
- ゲームの世界観を乗り越えた「ドラゴンクエスト アイランド」
- テーマパークは「ホップ・ステップ・ジャンプの法則」
- 成功するテーマパークは感動が継続する
- 足の裏の感触をエリアごとに変えるディズニーランド
- リアルな感動はアナログにあり
- ビジネスに「物語の力」を活用する
- 第7章 アイデアを生み出す原点 ― レジェンドの仕事術
- 30年にわたってアメリカのプロから学んだこと
- 企画の最初はリサーチボードで思考を進める
- 目に直接訴えるビジュアルは常に勝つ
- 「感動の引き出し」にどれだけ生きた情報を持てるかが勝負
- ダメなものはダメと言えるプロとしての信念
- ユニークな考えは決して集団からは生まれない
- アメリカでも変わり者と言われる技術者
- イグ・ノーベル賞をつくった男の最強の武器
- 「天野尚 NATURE AQUARIUM 展」に驚異の満足度の結果が
- 最終章 リピーターが求める感動価値を生むために あなたが今やるべきこと
- 自己満足でなく信念に基づいた「自分のスタイル」を持つ
- これがベストとみんなが思う「2段上の考え」を絞り出す
- 本当に自分だったら驚くか? ゲストが心を動かすものの本質を見極める
- 人気のテーマパークや絵本に共通する「プラス1のサービス精神」
- まず発想ありき。別次元の「コスト」を同時に考えることはありえない
- ゲストを集合体として捉えない。個としてのゲストを思い浮かべる
- 百聞は一見に如かず。体験は大脳皮質に蓄えられ、3つの効果を生む
- 世の中の人の嗜好をつかむために行動する
- 専門家の力を十二分に発揮させる向き合い方
- 発想を持続させるためのちょっとした工夫
- おわりに
書籍紹介
松本さんはテーマパークの開発やアトラクションの企画に携わってきた方で、現在はコンサルタントとして活躍されています。この本では、ゲストが何度もテーマパークを訪れたくなる理由を、具体的な事例とともに紐解いていきます。例えば、日米のテーマパークがコロナ禍から驚異的な回復を見せ、2023年には過去最高益を記録した背景には、ゲストの心を掴む「価値提供ビジネス」があったと松本さんは語ります。コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを重視する現代において、感動や心の充足を提供することで、ゲストは喜んでお金を払い、再び訪れるのだそうです。
テーマパークが値下げするとゲストが減少し、逆に値上げすると人気が高まるという現象などを本書で解説しています。これは、一見すると矛盾しているように感じますが、松本さんによると、ゲストは価格よりも体験の質や感動を重視しているからだそうです。また、長年愛されるアトラクションの裏には、最初の口コミが大きなきっかけとなった事例や、ゲスト目線に立つために「ゲストの隣に座ってみる」というシンプルながら深いアプローチが紹介されています。
松本さんは小さな会社でも大きな力を発揮できる「今からやろう会議」や、人気のテーマパークとロングセラー絵本に共通する「プラス1のサービス精神」など、ビジネス全般に応用できる考え方を提案しています。テーマパークという枠を超えて、どんな仕事にも活かせるヒントが詰まっています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
東京ディズニーランドの値上げの目的

日本のバブル経済崩壊で、日本のテーマパーク業界は「値上げしたら人が来てくれない」という呪縛にとりつかれてきました。けれど、東京ディズニーランドは料金を上げても人がたくさん来ていて、2001年にはディズニーシーもオープンしています。新アトラクションに8時間20分待ちの行列ができてしまうという異常な状況だったのです。ゲスト数を抑える意味でも値上げをするべきだったのでしょう。
ようやく東京ディズニーリゾートは方向転換を決意し、コロナ禍以降、来園者数もピーク時の8割ほどになるよう制限していました。その分パスポート料金を上げ、顧客のゆとりを高める方向に舵を切った結果、史上空前の最高収益を叩き出しました。
複数人でくるファミリーの負担は増えて、敷居が高くなったのかもしれません。それでも、テーマパークの快適さを高めて、ゲストに対して質の高い価値を提供することに成功しています。
「物語」はテーマパークの必須条件

テーマパークの定義は「テーマに基づき徹底した世界観をつくっている」ところです。遊園地は、乗り物を中心としたアトラクションによるパークづくりをしています。
昔からギリシャ神話やケルト神話のような物語が存在します。日本であれば古事記がそうです。古い民話や昔話、童話も、物語の原型に近いものがあるために、多くの人に受け入れられやすいのでしょう。
その物語の再現は、その物語を知っている多くの人が反応し共鳴するのです。ウォルトディズニーはファンタジーの再現に、人々を没頭させる魅力があることを、直感で理解していたのかもしれません。
ディズニーの物語は、グリム童話や民間伝承などを題材にしたものになっています。古い物語を下敷きにしてブラッシュアップしたものです。過去に流行った物語をよりよくしたものなので、物語の世界観に入り込みやすいでしょう。