「心の病」の脳科学

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 最新の疫学データによれば、精神疾患、つまり「心の病」に一生涯のうちに一度でも罹患する確率は80%です。もはや他人事ではありません。

 質の高い心豊かな生活を送るためには「心の病」を生み出す「脳」の正しい理解と、それに立脚した共感と思いやりのあるコミュニケーションを介して、人々がお互いに調和しながら進むべき道を柔軟に模索していく必要があります。

 脳科学との融合により、ストレスが心を狂わせてしまう問いに、科学のメスを入れることができるのです。

 多くの精神疾患は、適切な治療によって、少なくとも一部の症状は改善、もしくは完全に治りうるものです。

書籍情報

タイトル

ブルーバックス B-2224

「心の病」の脳科学

なぜ生じるのか、どうすれば治るのか

第1刷 2023年2月20日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

本文印刷 (株)新藤慶昌堂

カバー表紙印刷 信毎書籍印刷(株)

製本 (株)国宝社

カバー装幀 芦澤泰偉、小崎雅淑

カバーイラスト はしゃ

取材・校正 立山晃

本文デザイン 齋藤ひさの

本文図版 アトリエ・プラン

ISBN978-4-06–528363-9

総ページ数 286p

編者

林(高木)朗子 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム チームリーダー

加藤忠央 順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学 主任教授

出版

講談社

幻覚や幻視の仕組み

UnsplashMikita Yoが撮影した写真

 実際には存在しない感覚が現れる幻覚は、情報のバランス異常やトップダウン過剰で理解できます。

 人が刃物で刺される手品をみたときに、思わず感じてしまう痛みは「痛いはず」といったトップダウンの間違った予測が作用しているのです。

 視覚野が勝手に活動して、肝試し中にいないはずのオバケを見出しているのかもしれません。睡眠中もボトムアップの感覚が遮断されるので幻視の一種だと言えるでしょう。

 視野に比べて聴覚から入る情報は、とても少ないです。けれど、雑多な騒音のなかでも相手の会話が聞き取れたりします。これは、相手の話す内容をある程度予測できるからです。

脳内のセロトニンが減少すると

Image by Gerd Altmann from Pixabay

 セロトニンは、神経細胞の活動を抑制したり促進したりする神経伝達物質としてはたらき、気分屋記憶、睡眠や認識などの脳機能に関わっています。

 ASDモデルマウスは、ほかのマウスに近づいていこうとしません。ところが、生後間もない時期に抗うつ薬を投与すると、ほかのマウスに近づく時間が長くなり、社会性が改善しました。

 社会性・コミュニケーション障害は、感覚過敏によって周囲の状況や相手に関する情報をうまく処理できないことに関係しているのかもしれません。

顔の好みが変わる

Image by Alexandra_Koch from Pixabay

 脳の帯状皮質は、感情や学習、報酬などさまざまな機能に関わる高次領域です。そこをターゲットに顔の好みを変える実験を行いました。

 被験者に400枚の顔写真をみせて、1~10段階で好みの度合いを評価してもらいます。脳の帯状皮質の活動パターンを解読するデコーダも作成します。

 被験者に自由にいろいろなことを考えてもらう時間を1日1時間、3日間行ってもらったあと、平均的な評価の顔を示して好き嫌いを聞くと、以前の評価より平均で0.5ポイントほど「好きになった」と答えるようになりました。嫌いな顔ほど、「以前よりも嫌いになった」と答えています。

 顔を認識する神経細胞群は紡錘状回という別の脳領域にあります。なので、顔の認識自体は変わりませんが、その好みはある程度は感覚を変えられると考えられるのです。

前触れ症状

Image by Engin Akyurt from Pixabay

 パーキンソン病は、αーシヌクレインというたんぱく質が脳内の神経細胞に蓄積することにより、ドーパミンをつくる神経細胞が大量に細胞死を起こして症状が現れます。

 ドーパミンの不足を補う薬は開発されていますが、症状を緩和するだけで病気の進行を止めることはできません。

 最近わかってきたことは、手足のふるえなどの初期症状が現れる20年前から、便秘や睡眠障害、嗅覚障害、うつといった「前触れ症状」が現れることです。αーシヌクレインが蓄積し始めたことの合図だと考えられます。

 このαーシヌクレインは血液検査で早期発見につなげる研究が国内外で進められている最中です。

 アルツハイマー型認知症で蓄積するアミロイドβやタウは、画像診断や血液検査で調べることができるため、早期発見・治療ににより症状を予防する臨床試験が先行して行われています。

 発症前からシナプス異常など分子レベルの変化が起きます。その変化に伴う何かの前触れを捉えることができれば、早期発見も夢ではありません。

あとがき

 一見バラバラにみえる研究結果かもしれませんが、すべて研究によって得られた事実です。統合失調症という病気は、1つの原因で起きるものではありません。

 精神疾患の場合、ゲノムも関係しているし、環境、ストレス、生育、すべてが少しずつ絡み合って生じています。抑うつ症の中にもさまざまな病気があると考えてください。

 研究が進むことにより、それぞれの精神疾患がより細かく分類され、診断・治療法が整備されていくのが、未来の精神医学の姿です。ぜひとも精神疾患研究を応援していただければと思います。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 身体を壊してしまうと治りにくいことを改めて感じました。心の病も突き詰めれば身体の異常です。気合いでどうにかなる問題ではないし、働きかけすぎて個人の能力以上のことをさせるのは酷なことだと思います。

 心の病は、いろいろな症状があって、遺伝子や環境、育環境が絡み合います。なかなか、仕事を覚えられないスロースタートの人もいるでしょう。

 いろいろな人が働くなかで、ストレスをかけすぎて統合失調症を患わせないような環境であることが、健全だと思います。

 気合いだの何だのと、知ったかぶりをするくらいなら、少し詳しく「うつ」について学んでみてはいかがでしょうか。セロトニンやドーパミンなどの概念がないと、他人に対して負荷をかけすぎてしまうような罪深いことが起きると思います。

 ものを教える中高年の人が、若い人を壊してしまうのは、本当に罪深いことです。

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