金融教材『金融&ファイナンス』大全

※読書推薦人が興味をもった部分を紹介します。

はじめに

 本書では「金融のしくみ」「投資の視点」「コーポレート・ファイナンス」という項目の中から関心の高い分野を辞書のように学べます。

 読み進めるモデルルート・ガイドも設けており、どこを読めばいいのかが分かるようになっています。

  • 精読エクスパートコース
  • エクスパート制度問題スキップコース
  • 金融基礎習得コース
  • 個人資産運用コース
  • 企業財務ビジネスコース など、用意されている

書籍情報

タイトル

教養としての「金融&ファイナンス」大全

著者

野崎浩成

 埼玉銀行、HSBC、シティグループ証券マネジングディレクター、千葉商科大学大学院客員教授、狭路文教大学総合社会学部教授などを経て、東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科教授になりました。
 多くの金融書籍でランキング1位を取得しています。

出版

 日本実業出版社

お金の基本

金融とは

 金融とは、お金を融通すると書くわけですから、お金が足りている人から必要な人にお金を受け渡して、経済の働きをよくすることです。

貨幣の3つの目的

  1. 価値尺度機能
  2. 交換機能
  3. 価値保存機能

 貨幣がモノやサービスの価値を測るうえで使われています。古くはお米がその役割をしてきました。法貸の確率などにより、客観性が担保されているのです。

 物々交換よりも、共通の価値尺度を有する貨幣を介在させたほうが、経済活動が円滑に行われます。りんご1つのためにパパイヤを3等分して交換するよりも、りんごを100円で1つ買うほうが簡単です。

 お米を価値の媒介として用いると、劣化という避けられないデメリットがあります。貨幣はそうそう腐りません。

貨幣の需要

  1. 取引動機
  2. 予備的動機
  3. 投機的動機

 日常生活の中で消費者が買い物をする、企業が生産に必要な材料を購入するなど、経済活動を行っていくには貨幣が必要です。

 急病により、予定しなかった入院費用が必要になることもあります。このような将来の不測の出費に備えて、手元の資金を確保しておく需要を予備的動機に基づく貨幣需要と言います。

 貨幣は手元に置いていても利息を生みませんが、金利のつく預金に入れておく、国際などの債券を買っておけば、金利収入を得られます。

金融機関

金融仲介機能(金融機関の役割の1つ)

  • 情報生産機能
  • リスク負担機能
  • 資産転換機能

 情報生産機能とは、リスクを分析しリスクに応じた収益水準を計算します。これを付加価値として、銀行が貸出先を審査するという機能です。

 リスク負担機能には、銀行、保険会社、消費者金融会社などが該当します。銀行は貸出リスクを負担することで預金者を貸し倒れのリスクから守ります。

 資産転換機能を簡単に説明すると、小口の預金などの資金を集めて、大口の資金調達ニーズにつなげる機能のことです。

信用創造機能

 信用創造機能とは、銀行が預金と貸出の業務をくり返し行うことにより、世の中にお金を流通させ る役割のことです。

 銀行が最初に預かった預金の何倍もの資金が経済に供給されます。貸し出されたお金は経済活動を通じて、再び銀行預金となって返ってきます。

 お金を貸出と預金となって返ってくる、その反復を様々な銀行で行うことで、効率的に経済を支える資金供給が可能となるのです。

決済機能

 決済機能は、銀行振込、公共料金の自動振替、クレジットカード決済、口座からの引き落とし、海外への送金など様々です。決済するときは、ほぼ必ず銀行口座を通過するしくみとなっています。なお、資金の移動を銀行では「為替」というのです。

銀行の種類

メガバンク

みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)
三井UFJフィナンシャルグループ(MUFG)

 持株会社の参加で総合機能を備えている巨大機関であることがメガバンクと言われる背景です。「グローバルなシステム上重要な銀行」を表すG-SIBs(Global Systemically Important Banks)に指定されたのが上記の枠の3グループとなります。

主要銀行等

みずほ銀行
三井住友銀行
三菱UFJ銀行
りそな銀行
みずほ信託銀行
三井住友信託銀行
三菱UFJ信託銀行
新生銀行
あおぞら銀行
(埼玉りそな銀行)

 新聞記事などでは「大手銀行」という表現で用いられているのが、金融庁の区分で「主要銀行等」になります。

 基本的に都市銀行や、大手信託銀行の流れを汲む銀行といってよいでしょう。

 こうした銀行の多くは、金融グループとしての視点から監督が必要です。みずほFG、SMFG、MUFG、りそなホールディングス、三井住友トラスト・ホールディングスが監督対象になります。

地域銀行

 私たちが普段使っている「地銀」という言葉は、地方銀行ではなく「地域銀行」の略称のことです。地域銀行は、地方銀行と第二地方銀行のことをいいます。

 全国地方銀行協会に加盟している銀行を地方銀行といい、第二地方銀行協会に加盟している銀行を第二地方銀行と定義しているのです。

 地域銀行は受難の時代を迎えています。経営統合や他業態による買収などの話題にも事欠きません。

信託銀行

 信託銀行は、銀行法に基づく銀行免許を受けた銀行のうち、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」によって信託業務の兼営の認可を受けた銀行です。

 運用機能として、

  • 年金信託 :年金基金などから資金の運用を受託する
  • 金銭信託 :多数の個人から資金を預かる
  • 有価証券信託 :株式などを預かったうえで管理、運用する
  • 証券代行 :株主と企業をつなぐ業務

などがあります。

ゆうちょ銀行

 旧日本郵政公社から郵便貯金事業を引継ぎ、銀行法第4条第1項の免許を受けたものとみなされました。2017年に郵便貯金法に基づく郵便貯金は満期を迎え消滅しています。
 つまり、郵便貯金ではなく、ただの貯金です。

 ややこしいですが、郵便局とゆうちょ銀行は別会社です。全国的にアクセスしやすいのは銀行代理店として業務を受託している郵便局が約2万4千か所からです。しかし、郵便局を運営するのは日本郵便株式会社で、ゆうちょ銀行とは別会社なのです。

 ゆうちょ銀行も日本郵便も日本郵政株式会社の子会社です。ですが、郵政民営化に基づき将来的には、日本郵政が持つゆうちょ銀行の株は売却することが決まっています。ゆくゆくは、現状の兄弟関係を失うことになるのです。

 現在、他の銀行と比べると限られた業務しか運営が認められていません。それも、日本郵政の影響力がなくなれば、業務拡大をされる見通しです。

証券会社

証券会社の業務

リテール事業

 証券会社の支店網を通じた個人顧客との取引です。

 個人顧客が株式、債券、投資信託などの有価証券の売買を行う取引を担っています。株式の売買の受注が多いほど証券会社にとっては収益が増えるのです。

 最近の証券会社のリテール戦略として預かり資産を増やすという点に軸足が置かれています。長期的な視点に立った運用相談の対応を行うことで、顧客の信頼を勝ち取る狙いがあるのです。

ホールセール事業

 法人取引や海外におけるファイナンス業務を網羅しています。主に発行市場を担当し、次業として流通市場を担当しているのです。

 株式や債券を発行して、引受と販売、その後のケアを一貫して行います。日本ばかりではなくアメリカやヨーロッパ、アジアなどグローバルに展開しているのが特徴です。

証券会社のカテゴリー

大手証券

銀行系

みずほ証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
SMBC日興証券

独立系

野村ホールディングス
大和証券

 規模が大きく、地域的にもグローバルなネットワークを有しています。機能も多様です。

準大手証券

岡三証券
東海東京証券
SMBCフレンド証券

中堅中小証券

岩井コスモ証券
丸三証券
いちよし証券
東洋証券
極東証券
水戸証券
中核証券会社
あかつき証券
内藤証券
アイザワ証券
日本アジア証券
明和證券
リテラクレア証券 など

ネット証券

SBI証券
楽天証券
auカブドットコム証券
松井証券
マネックス証券

 ネット証券は店舗のコストが節約できる分、利用の利便性と低い手数料率で人気を集めています。

金利と利子

 利息や利子という言葉は1999年に導入されたゼロ金利政策以降、20年以上にわたって超低金利環境の中で育った世代には、馴染みのない概念となってしまいました。

 預けたお金から生まれるのが利子、借りたお金に足して支払われるのが利息とされていますが、二条に使われる利子、利息はこだわりなく使っていいと思います。

 金利という言葉はかなり便利です。金額か率のいずれかを指す言葉として使われます。はっきりと峻別すべきです。

金利にかかわる四つの学説

忍耐の対価

 資金を消費することなく第三者に貸し付けることで貸し手はある種の我慢を強いられます。この我慢の対価として金利が与えられるというのが、制欲説です。

時差の表現

 現在所有できる財は、将来も使えるので将来入手する財よりも高く評価されるべきであるという説です。時差説といいます。

動態説

 生産技術の発展に伴い、削減できるコストに見合うのが金利であるという考え方です。
 資金を投下したことで増加する生産、つまり成長した部分が金利であるという別の言い方ができます。

不便さの対価

 有名なケインズの流動性選好説です。
 手元に現金があると、流動性を確保しておくことができるので安心です。第三者に渡すことによって、すぐに使えない不便さが生まれます。この不安の対価が金利という考え方です。

 最も腹に落ちるのが、動態説でしょう。技術革新の不在や少子高齢化などは成長の足を引っ張ります。

単利と複利

 元本とは、元手となるお金のことです。収益を生み出すためのもとのお金となります。投資信託の購入金額のことをいったり、借入額の利息を除いた金額のことをいったりします。

単利

 元本を変化させずに計算して利息を決める極めて単純な計算方法です。

複利

 元本に利子を加えた金額をもとに次の期間の利息を決めるのが、複利の計算方法です。

 現実世界には、単利ではなく複利の場合がほとんどです。クレジットカードのキャッシングなど、無担保で消費者がお金を借りる方法がありますが、複利計算となります。

 100万円を15%で借りたときに、10年後には返済額は400万円を超えてしまいます。複利計算の怖さを、社会人になる前に知るべきです。

複利の計算式 元本P、金利r、期間n年、受取額=X
1年後:X=P(1+r)
2年後:X=P(1+r)(1+r)=P(1+r)2
3年後:X=P(1+r)(1+r)(1+r)=P(1+r)3

n年後:X=P(1+r)(1+r)(1+r)(1+r)=P(1+r)

名目金利と実質金利

例>

 100万円を年利10%の金利で銀行に預金できるとします。
 今100万円で車を買えるとしましょう。
 期待インフレ率は5%です。1年後の車の価格は105万円です。
 1年後には預金額が110万円ありますので、1年後に買えば手元に5万円が残ります。

名目金利とは、上の例でいうところの1年後の預金110万円の10万円です。実質金利は手元に残った5万円となります。

 現在のデフレのように物価下落が続くと、期待インフレ率がマイナスになります。仮に名目金利がゼロになっても、「すぐに買うよりも貯蓄して消費を先送りする」という行動が合理的になってしまいます。

 デフレ脱却のために、インフレ率を高めたいという政策的狙いはここにあるのです。

投資・運用の視点

株式

 企業の価値を表す1つが株価です。

 だからといって、株価が高い会社の企業価値が大きいわけではありません。企業ごとに発行した株式数が異なるのです。

 会社の価値を示す指標としては「株式時価総額」があります。株式数と株価を掛け合わせたもので、市場に流通する株式の価値の総体です。

株式時価総額 = 発行済み株式総数 × 株価

株式時価総額をみる

 1989年は日本のバブルピークでした。日本企業は世界の株式市場の主役で10社のうち8社を占めていたのです。

 最近のランキングでは日本企業は消えて「GAFA」とよばれるプラットフォーマーが上位を占めています。

 国家間の勢いという意味では、アメリカや中国の企業が目立っています。

株主の権利

配当

 企業が稼いだ利益を株主に配分することを配当といいます。

 株価の値上がり益を期待するよりも、預金の利息のような感覚で選択している人も少なくありません。

 投資家は、配当を株価でわった「配当利回り」を比べて投資をする傾向があります。

配当利回り = 1株あたり配当(DPS)÷ 株価
DPS  = 配当総額 ÷ 発行済株式数

②財余財産

 企業が事業の終了と解散を決めた時に、清算手続きに入ります。企業が保有している資産や賃借対照表外の権利などを処分して回収された資金は、債権者に分配され、残った部分が株主の手に渡ります。この権利を「残余財産分配請求権」といいます。

 厳密には、配分の優先順位が決まっていて、税金や労働債権(賃金)などを優先された後に一般債権に支払われます。

 まず配分される先は優先株式の株主です。優先株式を発行している会社は大くはないですし、会社の清算を考えながら株式投資をする投資家はいないと思います。

 企業がお金を稼いで税金を支払った後に残る利益は、配当に回るか、銃預金として内部に保留されるかです。配当はわかりやすく株主のものなのですが、内部保留された利益は会計上「株主資本」に蓄積されていきます。

③議決権

 企業の運営を行う責任者は、社長をはじめとする経営陣ですが、株主から経営を付託された存在に過ぎません。そのため、大株主は経営陣を解任することが来ぬです。そのパワーの源泉が「議決権」となります。

ポートフォリオ理論

リスクとは?

 金融における「リスク」というのは、損得の「振れ幅」のことをいいます。

 間違いなく利益がでる資産であっても、得の振れ幅が大きければリスクが高いと評価されるのです。

 金融市場ではこの振れ幅のことを「ボラティリティ」と表現します。

リターンとは?

 投資を行ったうえでの儲けが「投資リターン」です。その割合を「投資収益率」といいます。

 投資の果実は、投資を終える前に受け取る「インカムゲイン」と当初の投資額との差で認識される「キャピタルゲイン」があります。

 インカムゲインは配当や利払い金のことをいい、キャピタルゲインは売却損益のことをいいます。

投資収益 = インカムゲイン + キャピタルゲイン

ポートフォリオとは?

 金融資産の構成あるいは組み合わせを指しています。株式や債券など同じカテゴリーの資産に運用対象を集中するよりも、分散させたほうがリスクは緩和されるという考え方です。

 リスクのある資産収益率は一定しないため、収益率を固定して考えることはできません。そこで「期待収益率」という考え方です。

 ポートフォリオの期待収益率は、それぞれの構成要素の期待収益率の加重平均となります。

ポートフォリオの期待収益率=
 資産Aの全体に占める比率 × その期待収益率 +
 資産Bの全体に占める比率 × その期待収益率 + ….

 ポートフォリオを組む最大のメリットは、期待リターン向上というよりは、リスクのコントロールです。

 資産Aと資産Bで反対の動きをする性質があったとして、資産Aの価値が下がったときに資産Bの価値が上がるといった形でリスクを減らすことができます。

感想

 辞書のような本書なので、本当に部分部分を書きました。

 文字ばかりで読み飛ばしてしまった方もいるかもしれませんが、理解が難しいということはないはずです。

 専門的な言い回しや難しい言葉は出てきますが、読めばわかる教養本となっています。

 iDeCoや、デジタル通貨、ステークホルダー、ハードルが低くなった起業、などファイナンスの事柄を関心のある場所から、学べて比較的やさしく解説してあります。

 本の厚さと、文字の細かさ、専門用語ととっかかり難そうではありますが、見た目ほど難解なものではありません。お金の教養をつけたい方は読んでみてはいかがでしょうか。

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