全員”カモ”/著者:ダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス

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書籍情報

タイトル

全員”カモ”

「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法

発刊 2024年2月28日

ISBN 9784492047606

総ページ数 360p

著者

ダニエル・シモンズ

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校心理学部教授。同行の視覚認知研究所ディレクター。
視覚認知と視覚認識の分野で世界の有数の研究者であり、人間の近く、記憶、認識の限界について先駆的な発見をしてきた。

著者

クリストファー・チャブリス

ペンシルベニア州の統合医療機関「ガイジンガー」教授。行動・意思決定科学プログラムの共同ディレクター及び行動洞察チームの教員共同ディレクターを務める。
主な研究テーマは意思決定、注意力、知能、行動遺伝学。

出版

東洋経済新報社

もくじ

  • 邦訳版への解説ーー合法的かつ効率的に私たちの脳はハックされている 橘玲  
  • ■ はじめにーー絶対にだまされるはずがない人たちがカモになる心理バイアス
    • 絶対にだまされるはずがない人たちがカモになる心理バイアス  
  • 【ハビット】
    • 1 集中(フォーカス) ーー相手は何を隠しているのか
      • 霊媒師は何でも知っている
      • 成功者の秘密
      • 「可能性グリッド」で真実を見抜く
      • 「起こらなかったこと」を考えよ
    • 2 予測(プレディクション)ーー 「期待外れ」を喜べ
      • 「嘘」ほど「真実」に見える
      • 人は予想したものを信じる
      • 見えないゴリラ
      • いまやデータ偽装は日常茶飯事
      • 「先を見通す力」にもっとも大切なこと
    • 3 思い込み(コミットメント)ーー判断を後回しにする
      • 「マンデラ効果」_記憶は当てにならない
      • 100ドルを失う「損な考え方」
      • 「あの人がだますなんて信じられない」
      • 一瞬でカモになる典型的な「8つの思い込み」
        • 「私が何の話をしているか、みなさんおわかりですね?」
        • 「自然素材の製品は人工の製品よりも優れています」
        • 「真読を経た論文には科学的真実が書かれています」
        • 「正確なデータ収集・分析によるものです」
        • 「特別な印象を与えるような結果の操作はしていません」
        • 「われわれは決して詐欺行為を許しません」
        • 「システムは安全安心です」
        • 「私は犯罪や詐欺とかかわったことはありません」
    • 4 効率(エフィシェンシー)ーー相手の痛いところを突く
      • 「たった1つの質問」をしてさえいれば!
      • 人は「わかりにくいもの」にお金を出す
      • 核心から逃げる「8つのズルい答え方」
        • 「適切な調査を実施しました」
        • 「すでに検証済みです」
        • 「専門家のお墨付きです」
        • 「原本を紛失しました」
        • 「複数の情報源にもとづいています」
        • 「厳格で、強固で、透明性の高い……」
        • 「……(沈黙)」
      • 交渉を有利に運ぶ「3つの質問」
        • 「ほかにお話しいただけることはありませんか?」
        • 「どんな情報があれば考えが変わりますか?」
        • 「もっといい選択肢はどれですか?」
      • 「習慣」から抜け出す方法
  • 【フック】
    • 5 一貫性(コンシステンシー)ーーこの世界は不合理だ
      • 「うますぎる話」を見抜く方法
      • バターのようになめらかに
      • さあ、ノイズを歓迎しよう
      • 「平均して」と「常に」の決定的な違い
    • 6 親近性(ファミリアリティ)ーー「これ知ってる」を疑え
      • 似たような名前の店が乱立する理由
      • 「くり返す」と真実になる
      • シンプルで効果抜群_驚くべき「フィッシングの手口」
      • 「新しい見方」ができる簡単な方法
    • 7 正確性(プレシジョン)ーー“数字”の落とし穴
      • 「データ」と「数字」を正しく読めていますか
      • 「具体性」と「正確性」
      • 疑惑の「小数点第4位」
      • グーグル・マップが提案するルートを信用すべきか
      • 「はっきりした約束」を欲しがる私たち
    • 8 有効性(ポテンシー)ーー「奇跡」と「ドラマ」はない
      • 「ヘビの油」がもてはやされた背景
      • 「たちまち健康になれる」という嘘
      • 「プライミング効果」が行きついた末路
      • もう完全にコントロールされている
      • 「科学」と「テクノロジー」が世界を変えるのか
  • 結論ーーそれでも、賢く、したたかに生きる

紹介

 日々の生活において私たちがどのようにだまされやすいか、そしてそのような状況から身を守るためにはどうすべきかについての洞察を提供しています。本書は、心理学的なバイアスや認知の落とし穴を掘り下げ、実生活における具体的な例を用いて解説しています。

 実生活でのバイアスから身を守るための戦略を提供しています。本書では、集中、予測、思い込み、効率、一貫性、親近性、正確性、有効性といったテーマを通じて、私たちが日常で直面する詐欺や誤解に対処する方法を探ります。

 著者たちは、批判的な思考を養い、自分自身の思考プロセスを理解することが、ズルい人々にだまされないための鍵であると強調しています。また、自分たちのバイアスや先入観に気づき、それらを克服することが、賢く、したたかに生きるために不可欠であると述べています。この本は、個人が自分自身を守り、より良い判断を下すための実用的なガイドとして役立つでしょう。

「わかりにくいもの」にお金を出す

 格安レーザープリンターでは、新品のトナーカートリッジ一式がプリンター本体の価格の2倍もすることがありますが、2000ページを印刷するとインクが尽きます。

 プリンターの販売会社は総保有コストを知っていながら、それを際立たせることはありません。これは購入を決定づける重要な情報なのに、消費者には隠されがちです。

 隠された属性の中には「手数料」や「サービス料」といった明確な追加料金も含まれますが、これらが明示されていても、消費者は追加料金を支払う傾向にあります。

 ことわざにあるように、「ギャンブルを発明した人は賢いが、チップを発明した人は天才である」とされます。このようにお金が手からこぼれていると感じさせないことで、資金は自然と消費されます。

 目の前の情報に焦点を絞りすぎると、他の重要な情報を見逃すことがあります。信念や決意に従って行動すると、その信念や決意を利用されることがあります。このような習慣を利用されると、簡単に詐欺に遭うことがあります。私たちは、他人と関わる際には、効率を求めて近道をすることが多く、相手が正直で誠実だと信じがちです。

  • 世の中の「手数料」や「サービス料」
    • 保険料
      • 自動車保険料
      • 健康保険料
      • 生命保険料
      • 住宅保険料
    • サブスクリプション料金(定額制サービス料)
      • 音楽ストリーミングサービス(Spotify, Apple Musicなど)
      • 動画ストリーミングサービス(Netflix, Amazon Prime Videoなど)
      • ソフトウェアサブスクリプション(Adobe Creative Cloud, Microsoft 365など)
      • オンラインニュースや雑誌の購読料
    • 銀行手数料
      • 口座維持手数料
      • ATM利用手数料
      • 海外送金手数料
      • 振込手数料
    • 取引手数料
      • 証券取引手数料
      • 不動産取引手数料
      • クレジットカード取引手数料
    • サービス料
      • レストランのサービス料(通常は売上の一定割合)
      • ホテルのサービス料(宿泊費に追加される場合が多い)
      • 美容院のサービス料
    • 行政手数料
      • パスポート申請手数料
      • 運転免許更新手数料
      • 登録手数料(ビジネス登録や車両登録など)
    • 配送・物流手数料
      • 配送料
      • 荷物の梱包手数料
      • 特急配送手数料
    • 予約・キャンセル手数料
      • ホテルのキャンセル手数料
      • 航空券の予約変更手数料
      • イベントチケットの予約手数料

「うますぎる話」を見抜く

 一貫性が品質や本物である証しとされがちですが、実際のデータには必ずと言っていいほどばらつきや「ノイズ」が含まれています。現実的なレベルの無関係さや誤差を見極めれば、だまされることは少なくなるでしょう。

 ポンジスキームのような金融詐欺は世界中で繰り返されています。毎月一貫して5%に近い配当が保証される投資や、損失が出ないとされる投資は存在しません。最も「安全」な投資は、例えば米国債権です。現在の標準的な10年国債の年利は3.5%で、過去最高は1981年に記録された約16%です。これ以上の高い配当を保証されたり、損失がないと約束された場合は警戒が必要です。

 一方で、人々は高い配当が期待できても、リスクの高い賭けは避けたがります。損失の可能性があれば、投資する気にはなれません。損失リスクは、どんな合法的な投資にも伴います。

 こうしたリスクを嫌う人々が、マドフのような詐欺スキームに引かれることがあります。非現実的なスキームであることを知りながらも、一貫したプラスのリターンがあるという期待から人気を博します。

生成過程でノイズが多ければ、結果の一貫性を期待することは難しいです。短期的な一貫性に惑わされないよう注意しましょう。どんなプロセスでも、偶然に同じ結果が連続して生じることはあります。ノイズの存在は当然と考え、ノイズのないことを疑問視すべきです。

ポンジスキーム(Ponzi scheme)は投資詐欺の一種で、新しい投資家から得た資金を以前の投資家への利益として配当する構造です。この詐欺は、実際には利益を生み出すビジネスモデルや運用計画を持たず、単に新たな資金調達に依存しています。名前は、1920年代にこのスキームを使って大規模な詐欺を行ったチャールズ・ポンジに由来します。

ポンジスキームの主な特徴
高いリターンの約束:非常に高い投資リターンを短期間で保証することがよくあります。
◎リスクの低減の主張:リスクが非常に低い、またはゼロであると主張します。
◎新規投資家の依存:既存の投資家に支払うためには常に新規の投資家が必要です。
◎複雑なストーリー:投資方法やビジネスモデルが不透明または過度に複雑です。
早期の投資家への支払い:初期の投資家に対して高いリターンを支払い、彼らからの口コミで新規投資家を引き寄せます。

新しい見方

 「知っている」という感覚は、信頼の高いサインになりがちです。

 どうして知っているのか思い出せなくても、その情報に頼ることになるでしょう。しかし、本当に正しい情報なのか、できる限り確認するべきです。

 新しいタイプの食料品店を開きたいと考えています。ブランド商品はいっさい置かず、すべて自社ブランド商品にするつもりです。テレビ広告やソーシャルメディアは使いません。セールもしませんし、クーポンの利用もできません。ポイントカードも発行しません。新聞の日曜版にチラシを入れたりしません。セルフレジはありません。広い通路や大きな駐車場もありません。私の会社に投資していただけませんか?

 この一見つまらないアイデアは、アメリカの小売食品業界で非常に人気のあるトレーダー・ジョーズのビジネスモデルです。それにも関わらず、人々がこのビジネスプランに感銘を受けない事実から学ぶべきことがあります。プレゼンを評価する際、人々は成功している食料品店のステレオタイプに固執しすぎることです。

 このような親近感バイアスを取り除くには、自動分析が有効です。スポーツ業界では、選手のスカウトやチーム戦略の改善のためにデータ分析が用いられています。

 初めて目にする情報であっても、それが特に正確に見えると、必要以上に説得力があると感じることがあります。話や主張が具体的で明確で詳細であればあるほど、人々はそれを信じやすくなります。

はっきりした約束

 2020年5月初旬、アメリカでの新型コロナウイルス感染症による死亡者の報告が比較的少なかったころ、ホワイトハウスは独自の「キュービック」モデルを強調し、その政策を正当化しました。

 この「キュービック」モデルは、感染症の専門家でも易学者でもなく、大統領経済顧問のケビン・ハセットによって構築されました。ハセットが立てた予想は誤りであり、2020年5月半ばには、アメリカで毎日約1500人が死亡していました。

 イリノイ大学が発表した大学内の感染者予測モデルには初期の欠陥がありました。学生700人が感染するという予想は、多くの可能性の中のひとつに過ぎませんでした。この予想は、700人という数が、学生たちが検査や調査に承諾し、調査が滞りなく実施されるという仮定に基づいていたことが明らかにされていませんでした。より現実的な仮定を設けると、同じモデルでも予想は3000人から8000人に跳ね上がりました。

 私たちはしばしば、数字が正確であれば説得力があると思い込みます。私たちを欺こうとする者もまた、厳密な数字を提示します。数字が何かを約束しているように見えるため、私たちは簡単に騙されがちです。

 現実にはあり得ないほど都合の良い話には、たいてい具体的な数字やもっともらしい説明が伴います。数週間で新型コロナウイルスの死亡者がゼロになるという予測は、あまりにも都合がよく、現実とはかけ離れているように思えました。

イリノイ州のコロナ情報
 2020年、イリノイ州ではCOVID-19の大規模な流行があり、最初の確認されたケースは2020年1月24日に報告されました。州政府はJBプリツカー知事の下で迅速に対応し、3月9日に災害宣言を発令し、この新たに登場したウイルスの拡散と戦うための連邦および州のリソースへのアクセスを可能にしました​ (Illinois Department of Public Health)​。

 その年の様々な時点でパンデミックはピークに達しました。例えば、4月には、イリノイ州でのケースが急増し、4月17日には最高の一日の増加数である1,842件の新規ケースが報告されました。5月には州のケース数が56,000件を超え、5月4日には2,556件の新規ケースがピークに達しました​ (Wikipedia)​。秋に入ると、新規ケース数はさらに増加し、11月には12,000件を超える日も複数ありました​ (Wikipedia)​。

 イリノイ州は年間を通じて広範囲にわたる検査と、ソーシャルディスタンスとマスク着用のような公衆衛生措置の実施を含む対応を行いました。パンデミックに関するデータ、ケース数、公衆衛生対策の更新情報は、イリノイ州公衆衛生局の公式COVID-19リソースページやWikipediaの歴史データエントリーなどで定期的に更新されて公開されています​ (Illinois Department of Public Health)​。

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