ウクライナ戦争

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 ウクライナ戦争への道がどのように展開していったか、戦況がどうのように推移していったか、軍事理論や戦争の原因についても論じてみたいと思います。

 NATO拡大が迫っていたわけでも、ロシアの安全が脅かされていたわけでもありません。2022年2フ月24日でなければならない理由も説明できないのです。

書籍情報

タイトル

ウクライナ戦争

発行者 喜入冬子

発行 (株)筑摩書房

製作 (株)新藤慶昌堂

著者

小泉悠

東京大学先端科学技術研究センター専任講師。

出版

ちくま新書

便利なトランプ

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 2021年春、ロシア軍が「演習」の目的でウクライナ国境周辺に集結し始めました。終結した兵員はクリミアとドンバスだけで6万人以上にのぼります。

 2014年から紛争地域だったドンバス地方では親露派武装勢力による停戦違反(砲撃など)が激増していました。ウクライナ情勢は2015年2月に一応の停戦が成立して以来の危機が、戦争再燃という状況に置かれています。

 2016年のアメリカ大統領選挙中の発言から、トランプはウクライナに対して冷淡な印象です。「ウクライナ問題で大きな影響を受けるのは我々より欧州ではないか。ドイツは、ウクライナ問題に真剣に取り組まないのか。周辺諸国がもっと対処してもいいではないか。いつもアメリカが第三次世界大戦の危機を冒してまで先頭に立たねばならないのか」
 この主張はロシアにとって極めて都合の良いものに響いたと思います。

 2018年と2019年には、軍事産業取引をしていた中国とトルコに米国の制裁を課しました。しかし、トランプ本人がロシアを非難することはなく、ウクライナを積極的に支援する姿勢もみせていません。2018年7月のヘルシンキで米露首脳会議直前には、クリミアの併合を承認する可能性も排除しないと発言しています。

 トランプという存在は、ロシアにとっては便利な存在だったでしょう。

バイデン就任後

WASHINGTON (March 3, 2021) Official portrait of President Joe Biden, March 3, 2021. (U.S. Navy photo courtesy of the White House by Adam Schultz)

 バイデンは就任後2021年2月、ロシアによるクリミア強制併合を認めないと声明を発表し、ウクライナへの軍事援助を強化する方針を米国防総省が発表しています。

 2021年5月にはロシアとドイツを繋ぐ天然ガスのパイプラインの規制を解除し、ロシアとの緊張緩和を目指していたようにも見えるのです。

 ウクライナ側の軍事支援は、年間3億ドル程度を増加させる程度におわっています。大きな支援を得ることと、天然ガスのパイプラインの規制緩和を撤回させることに期待をかけていたようです。

 2021年10月にバイデンは、ロシア軍がウクライナ侵攻を考えていると報告を受けとりました。

 2021年11月には「タイガーチーム」と呼ばれる省庁横断の仕組みを大統領の直轄下に置き、起こりうる事態に備えたシナリオ作りや経済制裁プランの剣と、ロシアのプロパガンダに対抗するための情報発信を担当させていたとされています。

 12月、ロシアが外務省はNATOと米国に向けて送付した文書を公表しました。NATOをこれ以上拡大させないこと、冷戦後にNATOに加盟した国から部隊と兵器を撤退させること、ミサイル配備や演習活動に制限を設けること、などロシアにとって都合のよい要求が並んでいます。

 これに対し、ミサイルの配備制限などに関しては話し合いの余地があるとし、NATOの不拡大は約束しないといった返答を返したようです。あくまでも、「オープンドア」政策については一切の妥協を拒否しています。

 西側からの反応は「ゼロ回答」です。

綻びるロシアの戦争

Оксана ВернерによるPixabayからの画像

 戦略家とされるドヴォルニコフが5月半ば以降、公の場に姿を現さなくなりました。6月の頭には統轄司令官の任を解かれ、軍事担当国防次官のゲンなじー・ジトコ大将が後任になったとされています。

 5月12日ゲラシモフ参謀総長がプーチン大統領の信頼を失って事実上、失脚したとウクライナはインターネット番組で報道しました。本当ならば、戦争中に制服組のトップを指揮系統から外すというのは相当のことです。8月には黒海艦隊のイーゴリ・オシポフ司令官が罷免されるなど、プーチンはロシア軍の高官たちの首を頻繁にすげ変えています。

 ロシアの攻勢も夏頃に限界を迎えました。ルハンシク制圧をピークとしてロシア軍は再び停止し、大きな前進が見られなくなったのです。大きな役割を果たしたのは米国がウクライナに提供した高軌道ロケット砲システム(HIMARS)になります。「ロシア領内まで届くロケット・システムは提供しない」と明言し、「ウクライナの戦場で重要な目標を正確に攻撃できる兵器を供与する」方針を表明しました。たった20両のロケットシステムだけれど、実際に発揮した影響力は絶大なものです。

 西側もロシア軍を徐々に疲弊させていくものだろうと思っていたでしょう。

 ウクライナが国際メディアも巻き込み展開した作戦は、強力な兵器を獲得しました。そして北部のハルキウ正面で大規模な攻勢を開始し、ハルキウ州内のロシア軍を駆逐してしまったのです。さらに、春以降にロシア軍の攻略の拠点としてきたイジュームとリマンを陥落させ、短期間にロシア軍に大打撃を与えています。

核戦争に及ばない戦争

WikiImagesによるPixabayからの画像

 核使用の敷居を下げることはロシア軍内部でもリスクとされてきました。通常兵器を用いて同様の効果は得られないかと考えたようです。

 現実には、ロシアが巡航ミサイルや砲撃に至るまで攻撃を民間に対して用いてきましたが、ウクライナの抵抗意志が失われることがなかったのです。

 軍事支援やISR支援といった西側の支援も続き、通常兵器でこれ以上の攻撃拡大を図るとすれば、NATO領内の軍事施設などを限定攻撃するという方法が考えられます。その場合は、NATOとの全面戦争となるでしょう。

 第二次ロシア・ウクライナ戦争は、核戦争に及ばない範囲で能力を駆使する戦争だといえるかもしれません。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 軍事視点からみたウクライナ戦争のこれまでのまとめを考察できる書籍でした。

 停電や水などの影響と来年の春までに凍死者を抑えられるかという民間の問題もあります。少ない兵器の支援だけで、ロシア軍の侵攻をルハンシク周辺でとどまらせているという事実あります。

 ルハンシクとハルキウの間で停滞が続くのでしょうか。海外の外交雑誌はもちろん、定期的にウクライナ戦争についての本は読んで行きたいと思います。

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