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目次
書籍情報
ゴールド 金の世界史
神話・マネー・政治・権力
世界を動かす普遍の価値

ドミニク・フリスビー
イギリスの金融ライター。コメディアンでもある。
経済誌「マネ―ウィーク」に金および金融に関するコラムを連載している。国際的に金融をテーマにして講演を行っていることも知られている。
河出書房新社
- 用語について
- 1章 永久不変の金属
- 2章 金の起源
- 3章 神話とドラゴン、貨幣と王
- 4章 古典世界の金
- 5章 中世の交易と貨幣の性質の変化
- 6章 南米に暴力を招いた金への欲望
- 7章 中央銀行の誕生と偶然の金本位制
- 8章 摩訶不思議な錬金術の世界
- 9章 世界のゴールド熱
- 10章 第一次世界大戦とサウンドマネーの終焉
- 11章 ナチスと史上最大の隠し財宝
- 12章 日本の金の謎
- 13章 世界はなぜ米ドルに頼るようになったか
- 14章 そんなにたくさんの金をどうするのか
- 15章 金とのかかわり
- 16章 つまり金とは何か
- 17章 これからの金
- 18章 中国にはなぜそんなに金があるのか
- 結論─美、自由、真実
- 著者あとがき
- 謝辞
- 訳者あとがき
- 原注
- おもな参考文献
- 索引
書籍紹介
この書籍は、金(ゴールド)が人類の歴史に深く刻み込まれた普遍的な価値を、壮大なスケールで描き出した一冊です。著者のドミニク・フリスビー氏は、金融や経済に詳しいイギリスの作家として知られ、金の魅力を神話、貨幣、政治、権力の観点から丁寧に紐解いていきます。
古代の神話から始まり、帝国の興亡、大航海時代、近代の金融システムまで、金は常に世界を動かす原動力となってきました。たとえば、ナチスドイツの軍資金やアメリカの基軸通貨体制、現代の中央銀行の外貨準備に至るまで、金の影響力は今も色褪せることがありません。
金を「政府の嘘を暴く鏡」であり、「人間の誠実さを測る物差し」だと位置づけます。紙幣のような約束事に基づく通貨とは異なり、金は実物として存在し、価値が消えることがありません。本書は、単なる歴史書にとどまらず、金をめぐる人間の欲望や野心、繁栄と破壊の物語を生き生きと語ります。読者は、金が単なる金属ではなく、人類文明の礎石であり、未来をも照らす存在であることを実感できるでしょう。投資や経済に興味がある方はもちろん、世界史を新しい角度から眺めたい方にもおすすめです。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
最古の金製の人工物

最古の金製の人工物は、約6700年前に新石器時代につくられたものだと考えられています。ビーズ、指輪、ブローチ、王冠、ネックレス、護符、ペニスケースなど様々です。
生殖力をアピールするため、経済力の証として宝飾品が身に付けられていたようです。どの宝飾品にも凝った細工がなされていて、社会構造や専門技術、交易などがあった証拠となっています。
しかし、金を発見した場合は溶解して再精錬することが多く、工芸品としての価値より素材の価値を重んじられていました。なので、古代の金利用の証拠はほとんど消失してしまっています。
なんにせよ、金属利用の最古の例は宝飾品だったのです。
世界のゴールド熱

「おいみんな、金鉱を見つけたぞ」
ジェイムズ・マーシャル(大工)の金鉱の発見をきっかけにゴールドラッシュが起こりました。アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、南米、中米、中国と、大勢の人々がカリフォルニアに押し寄せた時代です。1848年は金の歴史の分水嶺だともいえるでしょう。
世界で金関連事業の規模が拡大しました。パリ造幣局のナポレオン金貨の発行枚数が約3倍に増え、アメリカ合衆国造幣局のイーグル金貨の発行枚数は5倍に増えています。19世紀は古典的金本位制を可能にしました。
金採集でひとりの人間が一日に採取できる量の金は、その人の年収を超える価値がありました。つるはし、シャベル、ブリキの鍋を用意すれば始められる仕事だからこそ、採集人がカリフォルニアに殺到したのです。
カリフォルニアへの経路は2つ、安全だけれど8か月かかる凍えるほど寒いホーン岬ルート、船でパナマに行き熱病に感染する危険があるジャングルを35マイル(約56キロ)移動する3か月のルートです。お金のかからないパナマのショートカットルートが人気でした。
到着した人々は、毎日冷たい水に腰までつかり、石を掻き分けながら金を探しました。指はかじかみ、靴や着ているものは常に濡れています。日が落ちたあとは、金が吸着している水銀を加熱し、水銀のみを蒸発させて金を回収していました。健康にいいはずがありません。
21世紀の金取引

21世紀は、金にとってよい時期でした。1980年代の物価の下落は、過少投資と供給不足に繋がりました。供給不足は中国から希少金属や土などを輸入することで、世界はインフラに投資していったのです。
一方で米ドルは、ドットコムバブル崩壊以降ずっと弱い時期が続いていました。ドルが弱いとき、金はたいてい強くなります。それを後押しするように、金の購入方法が何通りも考案されたことで価値を高めました。2000年代には金価格に連動するETFも登場し、金を保有することが簡単になっています。
2010年代では金の価格上昇が抑えられ、低迷していたように思えましたが、2019年から追い風のように金の価格は上がり続けています。主な要因はアジアの中央銀行による金購入です。金の生産量は中国が378トンで1位、続いてロシアが322トンで2位です。アジアの中央銀行は生産国から金を買い、ユーロとドル保有量を減らし続けている状況です。
金の需要

金の年間需要のうち50%が宝飾品です。23%が投資目的で、産業界からの需要はわずか6%となっています。この需要が頭打ちになっているような気もしますが、宇宙開発などに金が使われる余地があります。
熱伝導率は銀や銅のほうが高いが、金は腐食や酸化に強いのでコーティング剤として電子機器に使われています。赤外線を反射させて宇宙船内の加熱を抑えることができるので、温度保護と耐久性から金はうってつけです。
いまのところは需要拡大となるほど、宇宙開発事業がさかんに行われていません。宇宙事業で劇的な変化が起これば、金の需要も大きくかわるでしょう。
金の形がナノ粒子にかわると、いろんな治療に活用できます。金は生体的合成を有し、体内に入ったときに免疫反応を引き起こしません。さらに、マラリアやHIVといった菌とも結びつくため、正確な検査や感染病の治療などにも期待されている物質です。温度管理で言えば、建築素材としても応用できるはずです。
各産業での金需要は金箔やナノ粒子といったものです。現時点で急激に需要を伸ばすことは考えられないでしょう。これからの金の需要は、投資と宝飾品です。