世界標準の経営理論

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 ビジネスパーソンが経営理論を学ぶべき理由は、圧倒的な「汎用性」にあります。

 「M&A」「競争戦略」「人材評価」「ガバナンス」など、実際にある事象・課題の「現象」を思考の出点とするタイプが1つの形です。理論を思考の出発点にするタイプもあります。経営学者の話を聞くときは、この区別が必要です。

 RBVを確立したジェイ・バーニーは「理論ドリブン」の思考を持っています。トロント大学のアニータ・マクガハンは「現象ドリブン」です。

 現存するほぼすべての経営学の教科書は現象ドリブンで構成されています。書店に並ぶほとんどの経営書・ビジネス書・MBA本もそうです。わかりやすくするために用いているのかもしれません。けれど、すべてのビジネス現象は、複数の理論で説明が可能なので、1つの理論の説明が浅くなります。

 理論から現象を考えると、理論から考えられる現象が無数に出てくるので、説明が深くなるのです。

 理論ドリブンの思考軸を持てば、理論と現象の往復が可能になります。ビジネスを1段も2段も深く考える圧倒的な力になるはずです。

 クラウドソーシングやSNSなども、そのうち新しい現象が出てくるかもしれません。けれど理論は古びないので、時代を超えても使えるものだと考えています。

書籍情報

タイトル

世界標準の経営理論

第1刷 2019年12月11日

発行者 ダイヤモンド社

ブックデザイン 遠藤陽一+中村沙蘭(design workshop jin)、金澤彩

校正 加藤義廣(小柳商店)、聚珍社

製作進行 ダイヤモンド・グラフィック社

印刷 勇進印刷

製本 ブックアート

編集担当 肱岡彩

ISBN978-4-478-10957-1

総ページ数 820p

著者

入山章栄

早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

出版

ダイヤモンド社

「取引コスト」で決まる

Image by Tumisu from Pixabay

 新興市場への進出では高い取引コストに気を配る必要があります。しかし、世界的に見れば、全体的には市場のコストは間違いなく低下傾向にあるのです。

 ITが進展し、国境をまたいでくれるので、市場全体での取引コストが大幅に低下し、それが組織の範囲に大きな変革を迫っています。

 小さく若い企業でも取引コストを多くはけずに国際的な市場取引を十分に行えるので、一気に国際化できるのです。

 TCE(取引費用理論)によれば、企業とは市場取引でコストがかかる部分を内部化した範囲のことです。市場の取引コストが下がったなら、内部化の必要はありません。

 世界的な解体の高まりの背景には取引費用の低下があります。こうした変化は、TCEを思考の軸に展開すると説明ができるのです。100年前のGMの生産外注、現代企業のITアウトソーシング戦略、国際化戦略、新興市場戦略、グローバル企業やコングロマリット解体まで、応用の範囲は極めて高いものとなっています。

進化するルーティン

UnsplashOlena Sergienkoが撮影した写真

 デジタル化のような大きな事業環境の変化に対して、我々はどうしてもお金や人材といったリソースだけを、新分野に配分する傾向があります。変化を阻むのはリソースではなく、ルーティンです。

 新規事業や市場の変化があった場合に、従来のビジネスのルーティンをそのまま移植する可能性があります。例えば、金融ビジネスのルーティンをそのまま移植してITに適応しようすることです。フィンテック事業の多くがITをベースに成り立つ以上、金融業のルーティンとは大きく異なっていると考えられます。

 ルーティンには経路依存性があるため、簡単に変えられません。デジタル新聞事業で唯一成功したギルバート研究のように、ゼロベースからルーティンをつくり直す覚悟がひつようです。

 組織や現場をつくる上で、ルーティンは欠かせません。しかし、大きな変化において、ルーティンは足かせにもなっています。ルーティンに変化、進化はこれかたの企業組織において、極めて欠かせないのです。

エコロジーベース進化論

Image by Dorian Krauss from Pixabay

 「企業とは生まれた瞬間から硬直化が始まり、やがて変化・進化が起こせなくなる」ということを、「ルーティン」「イナーシア」といった言葉の代わりにVSRSメカニズムと説明したもがエコロジーベースの進化理論です。

 それでも変わりたい企業は何をするべきかを示唆してくる内容なのではないでしょうか。

 生物学の「生物」と経営学の「企業」の違いは、前者は生物が最小単位の個体であるのに対し、後者は企業組織内に人・情報があることです。その組み合わせや流れを買えれば「企業は変えられる」可能性があります。

 優れた経営者には「現場から悪い情報が届かない」という企業内の情報選択の問題を回避しようと工夫している場合多いです。高級寝台列車「ななつ星」の成功で有名な唐池会長は、常に怒らないことで管理層が悪い情報を経営陣に伝えやすいように気を配っています。

 日本が生態系を超えた人材の移動は、一方通行であることが問題です。シリコンバレーに行く人材・日本企業は増えましたが、シリコンバレーの人材・企業は日本に還流していません。日本の機械メーカーはAI人材を採用していますが、機械メーカーからAI分野に人は流れていきません。

 時に人材を手放し、還流させ、複数の生態系がともに進化することも必要です。

 これからの日本におけるビジネスの進化を考えるなら、重要な視点となるでしょう。

ロジックの賢人

Image by Yerson Retamal from Pixabay

 経営の真理を突き詰め続けると、「人はそもそも、どう物事を考えるものなのか」という問いに、行き当たります。

 人がどう考えるかは人によって異なります。何より、1人の人間でも状況で異なるのです。

 日頃の会議、打ち合わせ、居酒屋談義、そして著名経営者の発言まで、我々は様々な「心理法則のようなもの」を日々語っています。

 突き詰めて、突き詰めて、突き詰めていくと、実は根底では「そもそも、人はこういうものだ」という暗黙の前提を誰もが置いているのです。

 自分なりに芯が通っているからこそ、思考がクリアで行動まで伴うということはあるのではないでしょうか。

 先人の知見を借りて「そもそも人はこういうものである」という視点を深く考える助けを得ればいいはずです。経営学の一般論であり、その基盤となる経済学、心理学、社会学ディシプリンなのです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 世界で展開されている経営理論を、思いつく限り書いたような1冊です。

 定期的に出版される経営学の書籍を、ほぼ網羅できるのではないでしょうか。

 深く考えたいのであれば、この本を指針として色々と考えてみても良いと思います。

 気になるところを、ちびちび読み進めただけですが、わかりやすかったです。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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