資本主義の中心で、資本主義を変える/著者:清水大吾

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書籍情報

タイトル

資本主義の中心で、資本主義を変える

発刊 2023年9月6日

ISBN 978-4-910063-33-1

総ページ数 314p

著者

清水大吾

日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)に入社、07年にゴールドマン・サックス証券に転職、16年からグローバル・マーケッツ部門株式営業本部業務推進部長。

出版

ニューズピックス

もくじ

  • はじめに
  • 資本主義は「限界」なのか?
    • 資本主義を「疑う」からこそ、資本主義の「中心」へ
    • Up or Out(成長か退場か)の世界で
  • 世界をよくする、日本から
  • 1 資本主義は「限界」か?
    • episode.「成長を疑うヤツは出て行け」
    • 1-1.資本主義の方程式
      • 資本主義=「所有の自由」×「自由経済」
      • 国ごとに異なる資本主義の「使い方」
      • 資本主義「ラーメン」説
      • トッピング①成長の目的化
      • トッピング②会社の神聖化
        • 会社が「永遠の存在」は錯覚である
        • 「まじめな社員による不正」は隠れた「あるある」
      • トッピング③時間軸の短期化
        • 「短期目線」が生まれた理由
        • 上場を「選ばなかった」パタゴニア
        • ビジネスの時間軸はこの2つで語れ
      • episode.若手の解雇を目の前に
    • 1-2.競争原理がすべてを動かす
      • 1.資本の暴走
      • 2.格差拡大と民主主義の機能低下
      • 3.環境問題は「国境を越えない」
        • 「キレイごと」より国益
        • ESGの台頭
      • 薬も過ぎれば「毒」になる
        • 「儲ける」か、「儲ける」か
      • episode.自ら「成長至上主義の歯車」を回すとき
  • 2 お金の流れを根本から変える
    • episode.悪夢の長い階段
    • episode.「キレイごと」追求のための、1000億円超の案件
    • 2-1.日本の資本市場のボトルネックは「忖度」文化
      • 上場という「重い十字架」を背負う覚悟はあるか
        • 株価上昇は「社会貢献」
        • 「権力の腐敗」は誰にでも起こる
      • 株式をめぐる「袖の下経済」
        • 「安定株主」で会社は安定しない
        • 「交換条件」で回る袖の下経済
      • 「せっつく投資家、耳をふさぐ経営者」の悪循環
        • 資本市場界の鎖国
        • 投資家は「待つ」、経営者は「脱ぐ」
      • 忖度で動く日本経済
        • 「うちの棚に商品を置きたければ、うちの株を買え」
        • この「商習慣」が日本を弱くする
    • 2-2.「忖度」を解くカギは「緊張関係」
      • ドイツを変えた「シュレーダー改革」
        • 「成長」ではなく「膨張」する日本
      • ミッションは「出禁にならず」、社長にたどり着くこと
        • 「いっそ法律で禁じてほしい」
        • 「売りたいけど、売れない」株式
        • 巧妙に隠された「袖の下」との攻防
      • episode.「会社が動いた」、GSに新部署を立ち上げる
    • 2-3.「空気の読めない人」が時代をつくる
      • 「岩を動かす」あの手この手
        • 「変わりたくない人」を変える方法
        • 「欧米的発想は嫌いだ」と経営者が頑固になるワケ
        • 「従業員を守る」が本当に良い企業か
      • そもそも日本に資本主義はあるのか
        • 「何を評価するか」が企業文化をつくる
        • 指示待ち「キティちゃん」の反省
        • 「他社さんはどんな感じですか?」
      • ESGを戦略的に使う
        • 「トロイの木馬」作戦
        • 投資家の「日本参入」メリットを考える
        • 金融教育は哲学だ
        • 「資本市場ファースト」がリピーターを生む
        • 日本開国
        • 「空気の読めない」改革者の共通点
      • episode.刀折れ矢尽きる
  • 3 ピラニアを放り込め!
    • 3-1.過去の言葉になった「Asia ex Japan」(日本を除くアジア)
      • インフレや円安は「突然」起こったのではない
        • 30年「失い」続けても「安定」の日本
      • 茹でガエルから脱出する方法
        • 1.「ゼロヒャック思考」に陥るな
        • これからの日本で「何度も挑戦すること」が合理的な理由
        • 2.しがらみの力を解く「ペンギン」
    • 3-2.「健全な緊張感」のもたらし方
      • 資本主義社会の「ピラニア」とは何か
      • 1.消費市場
        • 消費市場のピラニア:企業の覚悟は「値決め」にあり
        • 消費市場のピラニア:消費者それぞれの「正義」とは
        • 正義は人の数だけ
        • 「バブル」も消費者が起こす
      • 2.労働市場
        • 「会社の常識、社会の非常識」に陥っていないか
        • 労働市場のピラニア:労働者の「安定」は誰がつくるか
        • 労働市場のピラニア:経営者が「利益」より重視すべきもの
        • 「賃上げ」と「インセンティブ」の違い
        • 誰をリーダーにするか
        • もっと報酬の話をしよう
        • 人事権は事業部がリードせよ
      • 3.資本市場
        • 資本市場のピラニア:投資家は「水槽」から追い出されてきた
        • 「不正のバケツリレー」を助長する組織の仕組み
        • 四半期開示は「悪」なのか
        • 投資家と経営者は「相互不信」から「緊張関係」へ
        • 「長期目線の投資家」に振り向いてもらうために1番重要なこと
        • 「投資の神様」バフェットの投資基準
        • 資本市場のピラニア:個人は「目利き屋」を目利きせよ
        • 「対話なき投資」が、成長を妨げる
      • ESG経営は、つきつめれば「企業文化」
        • 「本当?」おじさん
        • ROE(地球利益率)で評価する時代がくる
  • 結び:スポーツ界にあって経済界にないもの
  • おわりに

はじめに

 ゴールドマン・サックスという会社は、資本主義の本場である米国で、150年以上生き残ってきた証券会社です。M&A助言業務で常に世界のトップクラスの実績をだしてきました。これまでに複数の米国財務官を排出して、政治にも大きな影響を与えてきたのです。

 2023年1月11日、日経新聞の夕刊一面に、米国系証券会社ゴールドマン・サックスの大量解雇を報じる記事が載りました。私は解雇された3200人の中の1人です。

 結果を出さなければ生き残れないという競争環境に身を置きながら「成長至上主義」に、ずっと疑問をもっていたのです。

 現在の資本主義が完璧でないのも事実です。しかし、資本主義より他に有意な経済システムが見当たりません。まずはその本質を理解しなければならないでしょう。

 資本主義を「疑う」からこそ、資本主義の流れを変えられるのではないでしょうか。

 風邪に効く特効薬はないが、薬をもらうと安心します。しかし、本当に大事なのは対症療法ではなく、風邪をひかないようにすることです。

資本主義ラーメン説

 本来の資本主義に、いつの間かいろいろな思想がトッピングされてしまったという側面があります。

トッピング
【のり】成長の目的化
【チャーシュー】会社の神聖化
【たまご】時間軸の短縮化

 これらの要素によって、資本主義の姿が見えづらくなってしまっているのです。

 成長は「競争の副産物」に過ぎなかったはずですが、無限の成長を求めるかのような投資マネーが引き続き膨大に存在しています。実体経済に組み込まれている我々は生活をしていくために、自分の本当の気持ちに気づかないふりをしなければならないことが頻繁にあるのです。「成長が目的ではない」と言えない社会になっています。

 会社が「永遠の存在」は錯覚です。会社という仕組みを活用すれば、個人では成し遂げられないような壮大な取り組みを成し遂げられるようになります。資金を調達して規模が大きくなったのが「株式会社」です。経済の成長ステージを過ぎて人口が減っていく日本において産業を活性化させていくために、適切な新陳代謝が必要であることは論をまちません。厳しい言い方をすれば「存在意義を失った会社は、どんどんつぶれるべき」なのです。

 時間軸のものさしに関しても、定義をし直す必要があるのではないでしょうか。社会の価値観が大きくかわりつつあるなかでは、企業が目指すべき姿から逆算して「今」とるべき行動を判断するべきです。価値観が「コロコロ変わる」ことを恐れる必要はないでしょう。ビジネスにおいて「四半期」や「1年」といった括りが設けられていますが、アワビは熟すまでに3年かかります。未熟なアワビを採らないために仕組みを整える今が大切です。

「商習慣」が日本を弱くする

 ソフトウェアサービスの日本企業が、日本では新参者だからといって相手にされなかったが、アメリカに行くとそのばで商談が決まったというケースが多々あります。そうなると、良質な案件が海外へ流出させることになるのです。

 地方に行くとより一段と保守的となる傾向があります。社会の価値観が大きく変わる局面においては、変化を妨げてしまう要因となりかねません。

 バーターが日本経済を弱くする理由として、政策保有株式の問題点を3点にまとめておきます。

  1. 経営に対する緊張感の低下
  2. 資本効率の低下
  3. 商品やサービスの向上意欲が削がれてしまう

 本来であれば政策保有株式を設備投資や研究開発に振り向けるべき資金を、固定してしまっています。株式を保有することで優先的に取引を獲得できると、競争が阻害されて商品やサービスの向上意欲が削がれてしまいます。気がつけば厳しい環境で闘っている海外企業に差をつけられてしまいかねません。

「空気の読めない」改革者の共通点

 空気の読めない改革者の共通点は「客観性を持っている」ことです。社内の論理に染まり切ることなく、客観性を持って自社の本当の姿を見抜くことができます。

 こうした存在は少数派であり、圧倒的な同調圧力の前に屈することも多いのです。

 しかし、多様な考え方の人材を多く取り入れることによって、変化のスピードを加速させることができます。若手の意見を積極的に取り上げ、一見非常識な意見も面白がるというおおらかさがあると良いでしょう。

 また改革者の多くは投資家であることも多いです。短期的なゼロ・サム・ゲームをやっている投機家はまったく異なる存在です。企業との相互不信を乗り越えてインベストメント・チェーンの良きプレイヤーとなるべく、地道な活動を続けています。

 また、対話の質も高いので、ファンを生むような素晴らしい投資家も存在します。

 企業と投資家が協働できるようになれば、持続可能な社会の構築も現実味を帯びてくるのではないでしょうか。

個人は「目利き屋」を目利きせよ

 投資信託を購入することによって「プロの投資家に起業の目利きをお願いする」という考え方があります。アクティブ投資家が厳選した企業の目利きをお願いするわけです。

 アクティブ投資の反対はパッシブ投資といいます。TOPIXや平均株価などの指数に連動して運用成果を手にいれる考え方です。コストは安くなりますが、その分だけ企業に対する分析や企業に寄り添うという行為が希薄になってしまいます。

 世の中がパッシブ投資家だけになってしまうと、企業と投資家の対話が希薄になってしまい、企業価値向上に向けた活力が削がれてしまう点を忘れてはなりません。

あとがき

 退職にあたっては急にすべてのコンタクトをシャットダウンされる形でした。しかし、私の志は変わっていません。今後に関してはまったくの未定ですが、次の10年が人生の集大成になると考えているので、社会に対して最大のインパクトを与えられると思える取り組みを選択していきます。そして、結果を成すことができれば、筆を取らせていただくでしょう。

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